「玉姫殿」な音楽

この業界に20年いれば、結婚式場の音楽に関係している知人(や知人の知人)は当たり前のように複数いて、内情はおおよそ見当が付くので、そのネタ話は大して面白くない。(結婚式の音楽演出はほとんどの場合、そこに出入りする個人やイベント会社に丸投げされており、実際の「本番」を担当するのはバイトだったりすることが少なくないようで、そこにホテルの威信は賭けられていない。直営の看板レストランで粗相があった、というのとは、随分と意味が違う。)

それはともかく、先週末の堺のナクソス島のアリアドネのラストシーンは、客席の中央で、スポットライトを浴びて左右から近づく男(バッカス)と女(アリアドネ)が高らかに愛を誓って、会場は尋常でなく盛り上がり拍手喝采だったのだが、2日目に2度目に見たときに、「ああ、これは、照明の感じといい、大勢の座った人たちが中央に立つ二人を見守り、その前途を祝福する状況といい、結婚披露宴の演出だな、それで不思議なスイッチが入って盛り上がってしまうんだな」と気がついた。岩田達宗は、こういう発想を形にできる男である。

(ウィキペディアによると、今では全日本冠婚葬祭互助協同組合に加盟して「玉姫殿」の名を冠する結婚式場は少なくなっているそうだが、神戸のお寺の息子さんは、やっぱり冠婚葬祭を扱わせると門前の小僧、商都堺のお客さんの気持ちがよくわかっていらっしゃる。)