大阪フィルハーモニー交響楽団第403回定期演奏会

ザ・シンフォニーホール。ヴィンシャーマンの指揮でバッハ「ブランデンブルク協奏曲」全曲。

今回は曲目解説を書かせていただいたのですが、いくつか誤記がありました。原稿が遅くなって、タイトな日程の中、著者校正まで出していただいていたのに、私のミス、校正漏れです。すみません。

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  • 第2番 ヘ長調 BWV 1047 6行目

 × 4つの独奏楽器 → ○ 3つの独奏楽器

  • 第5番 ニ長調 BWV 1050 終わりから2行目

 × 第2楽章のジグで → ○ 第3楽章のジグで

  • 第6番 変ロ長調 BWV 1051 終わりから3行目

 × 第2楽章では → ○ 第2楽章は

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演奏は、前半(第1、3、2番の順)を聴いて、正直、昔懐かしいスタイルと思いました。もちろん、大編成で重厚に弾く往年の巨匠のやり方ではなく、小編成ですっきり軽く明るい音ですが、はっきり「一昔前」と感じるのはリズムの取り方。強拍や重要な拍を強く弾くモダンなリズム感なので、まるで、古典派のドイツ音楽。バロックというより、18世紀(以後)の様式だなと思いました。

曲が終わるやいなや、指揮者本人が真っ先に拍手してソリストを讃えるなど、ヴィンシャーマンは、立ち居振る舞いも18世紀のギャラントな好事家的でしたから、これはこれで、ひとつのスタイルだと思います。

基本的には、ソリスト陣が合奏の前に並ぶコンチェルト・グロッソの配置ですが、第1番ではソロ群をオーケストラの「中」に入れて、管弦楽組曲に近い形にしたり、室内楽編成の緩徐楽章では、ヴィンシャーマンが指揮せず、椅子に座って「聞き役」に回ったり(お抱え音楽家の演奏を楽しむ領主のような感じ)、各曲の合奏形態の多様性をわかりやすい形で見せてくれました。特に、フルートの野津さん、ヴァイオリンの長原くん、チェンバロの桑形亜樹子さんによる第5番のトリオは絶品。

チェンバロの桑形さんもそうですが、今回は、リコーダーの山岡重治さん、ヴィオラ・ダ・ガンバの平尾雅子さんなど、豪華なゲストを迎えた演奏でした。そういったソロ奏者のお名前が、パンフレット最後のオーケストラ・メンバー表にしか出ていなくて、「客演奏者」扱いというのは、ちょっと勿体ない気がしました。

オーケストラの定期演奏会は、「序曲+協奏曲(休憩)交響曲」というフォーマットがほぼ確立していて、大フィルは、パンフレットも含めて、そういうシンフォニーコンサートの様式美を粛々と守り、多少のことでは揺るがないところが「格/ブランド」になっている団体なのかな、と思います。

そういう「老舗の格式」を支持するお客さんがいらっしゃるのだろうというのも想像できますし、そういう「格式」を保てないのはまともなオーケストラじゃないという暗黙の価値観で、そうじゃないものは本気で相手にしない人がいるのも知っていますが……。

だとしても、今回のような「異例な」コンサートは、もうちょっと「型」をクズしてもいいんじゃないかなと思いました。

スタッフが舞台中央に置いた指揮台を、ソリストが客席から隠れてしまわないように、ヴィンシャーマン自身が脇へズラした(=この曲の主役は指揮者ではなくプレイヤー、ということだと思う)というのは、さりげないけれど、象徴的な場面だったかもしれませんね。

(いつもの「大フィル=シンフォニーコンサート」様式のパンフレットだと思ったので、解説文は普通っぽく、お行儀良くを意識してまとめさせていただきましたが。)