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放送と農業:たぶん電波は「網」ではない

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Audible Past の第5章は、音響再生産技術に対する人々の信頼がどのように形成されたか、という、「社会性」を取り扱おうとしているようで、だからこそ導入部で価値形態論風の議論が呼び出されているのだと思うのだが、後半はちょっと食い足りない。電話やラ…

第5章

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音響再生産の価値形態論Audible Past といえば audiovisual litany と audile techniques を提唱した本だ、という風な紹介がさかんになされているようだし、目次で全体の構成をながめたときにも、忠実性 fidelity の話はあまり興味をそそられなかった。録音…

第4章

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男性による出産ジョナサン・スターンの Audible Past (邦訳『聞こえくる過去』)の第4章は、次の章で fidelity という新しいテーマが導入されるのに先だって、ここまでの話を振り返る中継地点になっているようだ。序論で「技術は文化だ」という構築主義を宣…

第3章

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音響電信技術と「神の声」Audible Past の電信を扱う3章で、電信の音からリテラルな情報だけでなく通信相手の状態・感情を聞き取り、相手に親密さを覚えることがあったというエピソードが出て、ここに、遠慮がちに視聴覚連祷の語が久々に出てくるが、これは…

関連して transcription について

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transcription を採譜と呼ぶときには、「聞こえ」を「書く」という行為を想定している。「音響」を「書かれた記号」に移し替えるというわけで、まさしく Audible Past が取り扱う案件、ジョナサン・スターンの言い方に倣えば、listening という身体技法の実…

第2章

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”audile” とは?ジョナサン・スターンが第2章の最初で言葉を尽くしてまとめようとしている案件は、日本で今ではお題目のように誰もが口にするようになった『聴衆の誕生』方式の「近代的聴取」とは、概念のスペックや力点が微妙に違っていそうなのだが、訳文…

序論、第1章

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序論:「技術は文化だ」ジョナサン・スターンを、今度は小説か戯曲を読むように一行ずつ検討してみる。視覚偏重で聴覚が不当に扱われている、という書き出しは、いかにもゼロ年代な、ひがみと煽りで辟易する。著者も時代の子である。そこを我慢して先に進む…