伊藤愛未ピアノリサイタル

[一部加筆11/31]

イシハラホール。

全身全霊で「今この時」の響きの彫琢に賭ける(作品の歴史的文脈や表現様式、作品の美的・形式的統一等を括弧に入れて)、おそらく最先端と言ってよい演奏様式、一種の演奏の現象学を目指しておられるようでした。

(彼女の先生、松村英臣さんは、ほとんど宿命のように、そういう弾き方をしてしまう人。また、それとは無関係ですが、どういうわけか、このスタイルは、演奏論好きの音楽学者の方々に、妙に評判がよい。)

この道を進むとしたら、技術的な限界が大きな障害になる気がします。最初のモーツァルトのピアノソナタ(K.576)を聞く限り、本来、もっと素直な(音楽に良くも悪くもまとわりついている記憶・歴史性や因襲を受け入れた)様式感をもっている人のようにも思いました。

他に、ショパン「幻想曲」、ドビュッシー「映像第2集」、プーランク「ナゼルの夜」、バーバー「ピアノソナタ」。