「木曜リサイタル」作曲家シリーズ・3ベートーヴェン 松村英臣ピアノリサイタル

先日、ご紹介した新大阪・ムラマツリサイタルホールでのリサイタルシリーズの3回目、本日終了いたしました。次回は、来週5/31(木)19:00〜、中務麗子さんによるプロコフィエフ。「ロミオとジュリエット」からの10の小品と、八幡順さんを迎えてヴァイオリン・ソナタ第1番です。

シリーズ4では、プロコフィエフを取り上げます。ピアノソロ版「ロミオとジュリエット」の躍動感に溢れ、緊迫感迫る難曲に挑む中務麗子と、名器ガルネリの芳醇な響きを奏でる八幡順との渋い第1番のソナタをご堪能下さい。

「木曜リサイタル」作曲家シリーズ

そして、さらに告知が続いてしまいますが、来月6/20(水)には、本日の演奏者、松村英臣さん&兼光祐佳をお迎えして、演奏つきの公開セミナーをやらせていただくことになっております。

大阪音楽セミナー2007 「古今東西音楽考 −その22−」第5日:2007年6月20日 18時30分〜20時30分

  • 講師:白石知雄(大阪音楽大学講師/音楽学)
  • テーマ:『フランツ・シューベルトとロマン主義時代の幻想曲』
  • 演奏:ピアノ/松村秀臣・兼光祐佳
  • 受講料:1講座につき500円(要聴講票)(受講料は当日会場にて受け付けます。)
  • 定員:180人(先着順)
  • 会場:大阪府立文化情報センター さいかくホール
大阪音楽セミナー2007 「古今東西音楽考 −その22−」 受講者募集!

このセミナーは、事前登録制(有料500円)です。

上のリンク先にある連絡先(大阪音楽大学エクステンション・センター)へお電話していただくか、もしくは、大阪音大ホームページからオンライン登録も可能なようです。

オンライン登録の場合は、大阪音大トップページ(http://www.daion.ac.jp/index.html←【注意】このページ音が鳴ります!)から左側メニューの「特別講座・公開講座」へ進んでいただくと、一覧の2ページくらいに、「古今東西音楽考 第5日……」というのが出てきます。そこから指示に従ってお申し込みください。

今日の演奏会は、シューベルトの4手連弾の幻想曲を交えてベートーヴェンを捉え直してみる松村英臣さんのアイデア。来月のレクチャーは、逆に、ベートーヴェン(今回演奏された「幻想曲風ソナタ」など)の影響などを踏まえて、シューベルトの幻想曲について考えてみようという、わたくしの企画。シューベルトを視野に入れたベートーヴェン(by松村)と、ベートーヴェンを視野に入れたシューベルト(by白石)ということで、いちおう、内容的に合わせ鏡のような関係になっております。

ちょっと登録方法がわかりにくいのですが、来月のセミナーも、お時間の合う方は是非。

セミナーでは、4手連弾の幻想曲のほかに、シューベルトの少年時代のピアノ独奏の幻想曲(幻想曲ハ短調 D 4e)という珍しい作品も演奏していただく予定になっています。

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しかしなんといっても、今日は松村さんです。

最初に楽屋でご挨拶して握手させていただいたときに、柔らかくこちらが包まれる感じで、「ああ、本物のピアニストの手だ」と感動してしまったのですが、演奏はもちろん、お話をお伺いする中では、1801年(作品27の「幻想曲風ソナタ」作曲当時のベートーヴェンについてハっとさせられる指摘をしていただきましたし(来月のセミナーの話の展開に強力なヒントをいただいた思い)、最後まで完璧に演奏会を取り仕切って、アンコールはリスト(ラ・カンパネラ)。

シューベルト同様、リストもベートーヴェンの強い影響を受けた人ですし、本プロ最後はcis-mollの「月光ソナタ」で、「ラ・カンパネラ」はシャープが一つ多いgis-mollということで、調性のつながりもある。(松村さんは、少し前まで、特定の調性で全体を統一するというコンセプトの古典・ロマン派プログラムを続けていらっしゃった、調性に敏感な人です。)さらに、ちょうど同じ時間にいずみホールではリスト・シリーズをやっているのだから、こちらでも一曲リストを、と秘かに考えてくださったようでした。

本当に真っ直ぐに音楽に取り組んでいて、ご自身のステージを責任をもって作る姿勢に頭が下がります。

それから、今日は兼光祐佳さんの対外的な演奏会初出演の場でもありまして、柔らかく穏やかに語りかけるようなシューベルトを弾いてくださいました。松村さんのほうもそれに答えて、すべてが夢の中の出来事であるかのような弾き方でまとめて、意外な表情のヘ短調幻想曲になりました。

(松村さんは、この曲には別のアプローチもあるはずで、次はそれを試してみたいともおっしゃっていました。来月のセミナー、まったく同じ演奏者で別の演奏を聞くというのが実現すれば、理想的な形でこの曲の多面性が見えてくることになりそうで楽しみです。)

私も出演者の皆さんを見習って、来月のセミナーをきっちりやり遂げねばと思っております。

もちろん毎週木曜の「作曲家シリーズ」も引き続きよろしくお願いします。