フルート奏者、大嶋義実の監修による、全4回のチェコ音楽シリーズ(栗東芸術文化会館さきら)。とても面白い内容なのですが、チラシから、趣旨を読みとりにくいのと、あまりにも仰々しすぎるタイトル、
ドヴォルジャーク没後100年・ヤナーチェク生誕150年記念特別企画「ボヘミアン・ラプソディ」「ボヘミアの空の彼方に〜コチアン弦楽四重奏団」
で損をしていると思います。
- モーツァルト フルート四重奏曲
- ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲「アメリカ」
- 同 弦楽四重奏曲「糸杉」(抜粋)
- ヤナーチェク 弦楽四重奏曲「秘密の手紙」
という選曲も、解説を聞くと意図はわかるのですが、これだけでは、有名曲集に見えてしまって……。
マンハイム宮廷楽団をボヘミアの音楽家が支えていたこと。プラハの人々が、モーツァルトを自分たちの音楽と自負していたこと。ドヴォルザークがアメリカで休暇を過ごしたスピルヴァルが、チェコ移民の町(いわば「新世界のボヘミア」)だったこと。など、個々の情報は、必ずしも目新しいものではないですが、大嶋さんのお話を通して聞くと、チェコから見たヨーロッパ音楽史の構図が見えてくる気がしました。
前日の2つの版の「糸杉」や、以前「音楽現代」に書いたオペラ「ルサルカ」の世界観、前から気になっているブラームス、ワーグナーとの入り組んだ関係を考え合わせると、ドヴォルザークは、19世紀ボヘミアのドイツ語/チェコ語の二重生活に、かなり深刻に浸食された人だったのだなと思います。
カフカやマーラーなど、20世紀初頭ボヘミア出身のユダヤ人については、既に多くのことが語られていますが、誇り高きボヘミア農民の側も、決して、事情は単純ではない。
こういうのこそ、誰かきちんと「カルチュラル・スタディーズ」ないし「ポスト・コロニアリズム」するべきなのでは?