歌や室内楽のピアニストとして定評のある船橋さんが、毎年、この時期に様々なゲストを迎えて続けているシリーズの第8回(京都府立府民ホール・アルティ)。今年は、松下悦子(ソプラノ)、コチアン弦楽四重奏団を迎えて、没後百年のドヴォルザーク。
前半では、初期歌曲「愛の歌」(ヨゼフィーナ・カウニッツへの秘かな思慕を込めたとされる=未出版)にもとづく、1880年代の歌曲集「糸杉」が、同時期に作成された同曲弦楽四重奏版と組み合わせて演奏されました。
歌曲版「糸杉」は、「死」や「天国」などの言葉(ドイツ語)に、ピアノがそれらしい音型で反応する、いかにもドイツリート風の、いわば「よそ行き」の音楽。弦楽四重奏版「糸杉」は、ほぼ同じ旋律を用いながら、表情や印象が、かなり違いました。シンプルな書法ながら、表情が細かく描き分けられていたり、テンポの緩急をつけて、民俗舞曲風に遊ぶ場面があったり。こちらは、いわば、仲間内の会話(おそらくチェコ語)。
他に、「ジプシーの歌」と「ピアノ五重奏曲」op.81。