ウィーン会議

先日のアルティ四重奏団の演奏会のプレトークはいくつか絵を見ていただきながら18、19世紀の弦楽四重奏や室内楽の背景をご説明する形にしまして、そのなかにウィーン会議の有名な絵の話も入れさせていただきました。

描いたのはJean-Baptiste Isabey。フランスの宮廷画家の1819年の作品で、どれが誰なのかわかっているようでWikipediaでも説明してある。

http://de.wikipedia.org/wiki/Datei:Congress_of_Vienna.PNG

後方の大きな肖像画の向かって左下に立っている二人の向かって左側がラズモフスキー伯爵なんですね。ウィーン在住のロシア大使として会議に参加していたようです。

メッテルニヒは左側にタイツ姿で立っていて、数多くの人物のなかでは彼だけが唯一何にも遮られずに全身像で描かれているのは、最重要人物ということなのだろうと思います。

あと、画面の右端の胸像は、よくみると KAUNITZ という銘があって神聖ローマ帝国初代皇帝だということがわかる。だとすると、その横の大きな肖像画は、おそらくときの皇帝フランツ1世なんじゃないかなあと思うのですが、どうでしょう? (周りに描かれているものも、図像的にそれぞれきっと意味をもっているのだろうと思うのですが……。)

で、そう思って全体を見直すと、奥の扉が開いてその向こうに見える女性の肖像もきっと意味があるのでしょうし、ベラスケスのラス・メニーニャスについて言われているように、ひょっとしたら画面に描かれていない皇帝様が手前にいて、その視点で会議の様子を捉えている体裁だったりするのかもしれない。

王政復古で、その後ウィーンはかえって力を失うわけですが……。

他にこういう絵も見ていただきました。

ウィーンのベーゼンドルファーザール(今はない)でブラームスがピアノを弾いている歌曲演奏会なのだそうです。

アップロードした画像では判読できませんが、正面のシャンデリアの上あたりのところに「Franz Liszt 1872」、向かって左の舞台扉の上のあたりには「Anton Rubinstein ????[後半判読不能]」の文字が埋め込んであります。ベーゼンドルファーのホールは、こういう風に来訪した大演奏家の名前を壁に刻んでいたようですね。

歴史画であれば歴代皇帝が描かれそうな位置に音楽家の名前が刻まれているのが、ちょっと面白いかも、と思ったのでした。