「ポピュラー音楽を作る」

ジェイソン・トインビー(安田昌弘訳)「ポピュラー音楽をつくる―ミュージシャン・創造性・制度」ISBN:4622071029

「憂鬱と官能を教えた学校」(ISBN:4309267807)を読むと、20世紀のポピュラー音楽の「理論」が、いわゆる「西洋音楽」と、(段差はあるにしても)地続きで、決して、断絶していないと納得できるわけで、だからこそ、あの本の内容は、東大生の「一般教養」になりえているのだと思います。

一方、トインビーの本は、(年末年始の本棚整理の合間に、斜め読みしただけですが)、商業音楽(というよりテクノロジーを含めた産業音楽)に独特の磁場のようなものを、濃厚に感じさせる気がしました。

音楽が、「表現」であると同時に「商品」であって、同時に「テクノロジー」でもある状態を、そのまま、とらえようとしている感じ。

本の後半で、ジャンルやダンス音楽も論じられていますが、「市場」を扱った第1章(音楽産業は映画産業的な「寡占状態」を達成したことがない、とか、産業との関わりの点で、スターダム、スタジオミュージシャン、ビッグバンドは区別すべきだ、とか、門外漢には、啓発されるところが多かったです)、本書の中心概念となる「(社会的)創造性」を扱った第2章(「歌」ではなく「声」なのですね)、楽器・録音等の「テクノロジー」を扱った第3章が、特に面白そう。

機会があれば、じっくり読みたいと思いました。