上原彩子ピアノリサイタル

いずみホール。ショパン「前奏曲集」とムソルグスキー「展覧会の絵」。極めて「オタク」的な演奏だと思いました。もしかすると文学的かもしれないイメージの豊かさ、響きの組み立ての緻密さ、いかにも鍵盤奏者らしい触覚的な、音をまず指先でとらえようとする発想、そして、それらをまとめあげる技術と集中力。いずれも、突出していると思います。でも、その具体的なやり方が、見事に、「伝統」から切れた、まるで、密室のようなところで醸造されていて、一種、異様な印象を受けました。作品自体の完成度の高いショパンの場合は、強烈な解釈として聞くことも可能だけれど、もともと八方破れのようなところのあるムソルグスキーの場合は、自家中毒のような、グズグズの演奏になっていたように思います。