京都市交響楽団第503回定期演奏会(の批評)

8/8(京都コンサートホール)の京響定期演奏会の批評が、本日の日経新聞夕刊(大阪本社版)に掲載の予定です。来年4月から常任指揮者に就任することが決まった広上淳一さん指揮の演奏会。

まだ、来年度の公演予定も出ていませんし、広上さんはコロンバス交響楽団の音楽監督と兼任で、当面、それほど頻繁に京都に来られるわけではないかもしれないらしいのですが、「次の常任指揮者になる人だ」という視点で、改めて広上さんの演奏について感想を書かせていただきました。
大友直人さんは、京響正指揮者になった1995年から数えると12年間京響に関わってきたわけで(96年首席指揮者、2001年常任指揮者&ミュージック・アドバイザー)、京響の歴史では一番長くポストを持っている指揮者ということになるようです。(来年の常任指揮者退任で「冠桂指揮者」の称号が贈られるとか。)

個人的には、大友さんというと東京交響楽団の人=ずっと秋山和慶さんの下にいた人という印象が強いです。京都で東響と同じ演目を前後して取り上げたり、創立50周年で東響と合同演奏をしたりということだけでなく、秋山さんが長い時間をかけてオーケストラを作っていくのを間近で見ていて、その現場にいないとわからない様々なノウハウを京都に持ってきたんじゃないかと思っていました。大友直人さんの演奏会は、指揮者の解釈を聞くというよりも、オーケストラができあがっていく進捗状況を見に行く、という感じが強かったですね。

おそらく、広島や九州で秋山さんが今やっているのも同じようなことなのだろうと思います。ある意味、これは、東京の大手デベロッパーさんが地方都市を東京流で再開発するのに似ている気もしますが^^;;、確かに便利で快適になった(世代交代もあってアンサンブルが安定してすっきりした)のですから、ひとつの業績ではありますね。

大友直人さんと大フィルの大植英次さんは桐朋高校で一年違いの先輩後輩だったそうですし、京響フルート首席の清水信貴なんかも同じ時期の桐朋出身。(このあたりの情報は、昨年出た大植さんの評伝で知りました。)

指揮者・大植英次―バイロイト、ミネソタ、ハノーファー、大阪 四つの奇蹟

指揮者・大植英次―バイロイト、ミネソタ、ハノーファー、大阪 四つの奇蹟

斉藤秀雄の最後の弟子たちが、21世紀の関西のオーケストラのトーンを決めた、みたいな言い方ができるかもしれません。朝比奈隆に象徴される20世紀の関西楽壇創設世代の音は、良くも悪くも、もう完全に過去のものになった。大友直人さんは、大植英次さんほど派手ではないけれど、粛々と世代交代を果たして、意外に大きな仕事をしたんじゃないかな、という気がします。来年度の広上さんがどんなことをしてくれるのか、というのも注目ですが、3月のマーラー9番まで、残り少ない大友さんの常任指揮者としての定期演奏会は、スケジュールが許す限り聞いておきたいなと思っています。