創作音楽劇〜音と言葉の出会い〜「賢治の幻想」

というのに行きました(2日目の1月9日)。

http://www.alti.org/page/1247189347.html

昨年夏の京都府民ホール・アルティの20周年記念行事、「夕鶴の世界」や「兵士の物語」の流れを汲む演劇と音楽のコラボ企画だと思います。リーダーは、去年の「夕鶴」と同じく大蔵流狂言の網谷正美さん。

正直言って、わたしは多くの人がどうして宮沢賢治に感動するのか、よく理解できないのですが、一連の演劇と音楽のコラボというコンセプトには大賛成ですし、今回は、「夕鶴」以上に本格的な演劇になっていました。

音楽は、今や京都市芸大学部長(!)の呉信一さんや、京響の首席奏者の人達などが参加した豪華な小編成アンサンブルですが、やっているのは純然たる「劇伴」。しかも生演奏。

公演を観て、聴いて、とても気持ちが良かったのは、なによりも、演奏していた皆さんがとても上手に、お芝居の流れにはまっていたことでした。ひとしきりストーリーが展開して、その気分を受け止めて、すっとクラリネットが吹き始める、というような場面がとても自然。良い音楽ができる座組みで、なおかつ音楽はあくまで脇役以上にでしゃばらない。なかなかできない贅沢だと思いました。

      • -

曲はすべて西邑由記子さんがこの公演のために作ったもので、どれもシンプル。特に、物語の最初や最後は、テーマミュージック風に毎回、同じ曲だったのですが、日本の民謡調にも聞こえるし、寂しげな心象風景のようにも聞こえる絶妙のポイントを押さえたものになっていました。

要するに五音音階風なのですが、物語の最後で「星降る夜」に言及された場面では、この曲をほんの少しだけ拡張して、宇宙的な広がりまで演出していました。五音音階は、ピタゴラスもしくは三分損益で4度を順番に取っていくことで作り出せますし、4度を基礎にする音の幅の広いサウンドは、SF映画などの定番。調性音楽の3度堆積和音との対比で、「広大な宇宙」をイメージさせる効果がある。そのあたりを利用していたようです。

あくまで音楽は脇役の「劇伴」なのだけれど、最後に、光が全体を包むようにして、なくてはならないものとしてせり出してくるような感じがしました。

良い仕事をしていらっしゃるなあ、と思いました。