「アレクサンドル・ネフスキー」

今週の後半の大フィル定期はプロコフィエフの「アレクサンドル・ネフスキー」をやります。

わかりやすい音楽で、合唱と歌(小山由美さん!)も入るので、予備知識なく楽しめるとは思いますが、解説を書くために見直して、やっぱりこれは映画を見ておいたほうが絶対いい、と思いました。

アレクサンドル・ネフスキー [DVD]

アレクサンドル・ネフスキー [DVD]

エイゼンシュテインといえばモンタージュ、というのは「ポチョムキン」等のサイレント時代の話で、大砲が生き物のようにムクリと起きあがって、目がチカチカしそうな編集のなかに、唐突に変な絵が一回だけ入って、あれは何だったんだ、とか、そういうのですよね。ロシア・アヴァンギャルド。

DVD>戦艦ポチョムキン (<DVD>)

DVD>戦艦ポチョムキン ()

ネフスキーの「氷上の決戦」で、左から右へ視線が流れて、プロコフィエフの音が上昇する「対位法」の件は、どんなすごいことが起きるのかこちらの期待が大きすぎたせいか、私は、ああそうですか、と思った程度でしたが、

でも、無音のタイトルロールで先に曲(カンタータの1曲目と同じ)だけがはじまって、途中でドンと映像が出る感じとか、ごく普通に「大作映画のオープニングはこうでなければ!」と思ってしまいますし、その感触があってから音楽を聴くと、音楽の効き具合が違う、ような気がしてします。

ドイツ騎士団は、ここまでやるか、というような造形ですし。

ただ、私は「氷上の決戦」の最後のところは、カンタータの派手派手しい音のスペクタクルよりも、ブクブクと効果音だけが聞こえて、スルスルとマントが沈んでいく映画の終わり方のほうが好きです。戦争とはいえ酷すぎないか、やりすぎたのではないか、という気持ちがよぎって、その感じが次の「死せる野」へつながる気がして。

プロコフィエフは、映画でもバレエでも、音と映像(と身体感覚)が記憶のなかでこんがらがって、絡まり合っているような状態で聴くときの効き目が抜群で、そういうところがロシアっぽいのかな、と思います。

オペラは……、本人は成功への相当な執着を抱いていたような気配ですけれど、「三つのオレンジへの恋」も「火の天使」も、入手できた映像を見るかぎりでは、舞台のヴィジュアルを作り込めば作り込むほど、「音がうるさい、音楽なしのお芝居で観たい」と思ってしまったのですが……。

Gambler [DVD] [Import]

Gambler [DVD] [Import]

「賭博者」は輸入版しかないのでしょうか。クールなお姉様ポリーナは、青筋を立てて歌わないでキリっとしている時が一番役柄が生きるような気がします。音楽が五月蠅いと感じるのは、バレンボイムだからなおさら、なのでしょうか。21世紀のウンター・デン・リンデンの一角という感じのガラス張りのモダンなセット。音楽で盛り上げまくるのは、最後のルーレットで勝ちまくる場面だけでいい。お芝居としてやればものすごく面白くなりそうなキャラの立った人を揃えているのに。