音楽と藝術をめぐる「言葉」が問題なのか、本当に?(『季刊アルテス』の書評と、いわゆる「プラスチックの木」の周辺)

いずみホールの会員誌『ジュピター』2月/3月号で『アルテス』VOL.01が紹介されました。

『ジュピター』で『アルテス』が紹介されました (ブログ * ARTES)

『ジュピター』は、少なくとも現状ではホールで無料配付しているPR誌なので、問題ないと判断して書評全文掲載します。

季刊『アルテス』VOL.01/2011Winter
2007年の創業以来、良質の話題作を次々世に送り出している音楽出版社が季刊雑誌を立ち上げた。ノン・ジャンルで、ホットな話題を語り合うメディアを謳う。創刊号の特集は「3.11と音楽」。どのページにも、この「非常時」を鋭利に考え抜こうとする言葉がひしめいている。ここには、あの大災害のあとで、それでも日常を維持しつづけた「普通の人々」、様々な葛藤をそれぞれに抱えながらコンサート活動をつづけた普通の音楽家や音楽ファンの姿はない。やや息苦しい内容ではあるけれど、2011年はこういう言葉が飛び交う年ではあった。そして書評はあるが、ディスク評はない。音楽を語る「言葉」にこだわるユニークな雑誌の登場である。(白石知雄)

『ジュピター』編集サイドから新創刊雑誌を応援したいとのことで書評の発注があり、一方、私のほうでは、さしあたり特集はイマイチだったのではとの感想を持っており、グルッと一周して、アルテスさんのブログが、そこではなく別の部分をピックアップした、という経緯になります。

以上、事実の確認のみで、特段の追加コメントはありません。

アルテス Vol.1

アルテス Vol.1

  • 作者: 坂本龍一,片山杜秀,吉岡洋,佐々木敦,大石始,石田昌隆,三上敏視,輪島裕介,川崎弘二,毛利嘉孝,谷口文和,山崎春美,長谷川町蔵,三井徹,加藤典洋,岡田暁生,椎名亮輔,高橋悠治,ピーター・バラカン,大友良英,三輪眞弘
  • 出版社/メーカー: アルテスパブリッシング
  • 発売日: 2011/11/25
  • メディア: 雑誌
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プラスチックの木でなにが悪いのか: 環境美学入門

プラスチックの木でなにが悪いのか: 環境美学入門

山形浩生氏の書評をめぐって複数のブログをまたぐやりとりがあるようで、それはいいのだけれど、さらにその周辺で、成り行きを傍観するひとりの美学者が「美学者の負け」と誰に頼まれたわけでもないジャッジをしているのを見かけた。最初は、まあそうかな、と思ったけれど、少し経ってから思い直すと、やっぱりそれはちょっと変で、社会という複合的な人間関係のなかに、「勝ち/負け」という対戦モードで切り取ることのできる部位はかなり少ないのではないかと思った。

美学者のいわゆる「対社会的」な発言が、そうした対戦モードでなされる、もしくは(発話者の意図と切り離したところで)対戦モードが駆動していると受け取られる場合があるとしたら、それは、美学者の発言、とりわけ言語分析への忠誠が、修行僧的で折伏的な何か(イエズス会とか日蓮とか、そういった戦闘的な布教宣教)を連想させる要素を含み持っているからではないか、と思った。 フランスの法服貴族パスカル……とか?

だから言ってるのに。分析哲学は「使用上の注意をよく読み、用法・用量を守って使う」ことが肝要なんだってば(笑)。

(そんなことばっかりやってると、分析美学は、「3.11.」以後急速にカルト化した危険な教団である、とか、言いふらしちゃいますよ(笑)。『アルテス』の岡田暁生とか、今にもそういうことを言い出しそうじゃないですか(笑)。今や彼は、あのシンポジウムを好機と捉えて、京都市烏丸のアート・センターの常連講師になりそうな勢いなんですから。世間は、そんな風に動いちゃうんですよ!)

近代日本の戦争と宗教 (講談社選書メチエ)

近代日本の戦争と宗教 (講談社選書メチエ)

再掲

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20世紀の思想を「言語論的転回」というスローガンで括る見方があるけれど、そういう方向性は、「口舌の徒」という警戒と疑惑の視線にさらされかねないものであり、そういう疑惑と不審感は、凡庸で誤解に満ちているかもしれないけれどもそう簡単に払拭できるものではないということを、忘れてはいけないのだろうと思います。

口べたな人間にはモノを考える権利がない、などという馬鹿な話はないはずですから。

身ぶりと言葉 (ちくま学芸文庫)

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