酒井健治「Danse Macabre〜27人の奏者のための」

行きがかり上、聴いてみた。

http://kenjisakai.net/sound

委嘱新作がいずみホールのフランス音楽特集のようなコンサートで初演されて、フランス在住でサン=サーンスで、時節と関わりのある創作コンセプトがあると伝え聞いておりますが、世が世ながら「オーケストレーションが上手い」と形容されるタイプの人じゃないのかな、と思いました。

あと、メロディーは……ありますよね(笑)。いま音がこっちのほうへ向かっている、こんな状態でこうなって、ここで一段落、というように聴いている耳を誘導していく音の動線(導線?)のようなものがくっきりしていて、27人で分担しているけれども、ほとんど単旋律じゃないのか、と思うようなところもあるし。

音源を聴いただけの想像ですけれども、これをホール空間に散開して演奏したら、音の帯みたいなものが太くなったり細くなったり、揺らめいたり、サッカーのパス回しみたいにストンと決まったりしながら、流れ続けたんだろうなあ、と思いました。

ジャンと和音が鳴って……、という最初のところを聴いてすぐに思ったのは、(「オーケストレーションが上手そう」という感想とも関連しますが)洋楽器はこの種の和音を鳴らしたり、精妙に倍音を響き合わせたりするのに向いた楽器なんだから、一番いいところを活かして何が悪いのか、というようなことでした。(洋楽器のそういうタイプの演奏の巧みな人が集まっているのだし。)

フランス人はフランス語しゃべって、アメリカ人は米語をしゃべって、○○人は○○語をしゃべって、そして、大阪生まれは大阪弁をしゃべるやんけ、みたいな。

ご本人は礼儀正しい方であるように伝え聞いておりますが、居場所をしっかり確保するというか、そこにいる人たちがそこにいることを全面的に肯定するというか、そんな手応えがあるなあ、と思いました。(アップロードされている録音が、どれもクリアでしっかりした音だからかもしれませんが、だとしたら、ご本人がそういう音をお好きだということでもあるのでしょうし。)

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なんだか小学生の感想文みたいになりましたが、最先端の技法とか作曲手法とか、(そういうところへ暮らしていらっしゃるのですから、聴く人が聴いたら色々言えるんでしょうけど)あまりそういう種類のありがたさは、気にならなかったですね。

今でも作曲家は、そういう技法(の流行)で書く、というものなのでしょうか。作曲業界のことは全然詳しくありませんが、あまりそういうことばかりやっても仕方がないことになっているような予感があるのですけれど。