http://blogs.yahoo.co.jp/katzeblanca/24056693.html
音楽について書かれた文章で、良いものを読むと、そこで扱われている作品なり、演奏なりが聴きたくなる。
という文章は原因と結果がさかさまで、「私は、そこで扱われている作品なり、演奏なりが聴きたくてたまらなくなることがある。」(=原因)「そしてそういう[巧妙に扇情的な]文章を読むと、いいなあと思う。」(=結果)というだけのことだと思いますが、
それはともかく、
ミケンにしわを寄せて弾き、学者ウケの良い文章を書く人としても知られるブレンデルに「退屈」の評があるのは……、
ベートーヴェンやシューベルトの全曲演奏にやたらに挑戦して、それが、本人の資質や引き出しのキャパと合わない、頭で考えた、若干の勘違いを含む義務や使命や役割でそうしているように見えてしまうからだと思います。個々の演奏の善し悪しではなく。ハルキの「やれやれ」と嘆息するマイクロポリティクスにおあつらえ向きのターゲットなのでしょう。
(バレンボイムも、似たような資質と役割意識の齟齬があるけれど、露骨すぎてもう誰も何も言わない。鬱陶しいからもう止めて欲しい、と文句を言う気力さえ、もはや、ない。)
アルトゥール・ルービンシュタインを世に送り出したような往年の社交界ネットワークの代わりに、LPレコードとワールドツアーでスターを生産する仕組みが安定した時期の人で、この頃の人達は「天才にして気まぐれなキャンセル魔」とか、「書斎派」とか、「権力への野望(指揮者転身)」とか、それぞれキャラ付けされていましたけれど、それは安定したビジネス・モデルの神輿にのってこそのことで、
(だから吉田秀和は、ある時期から演奏家に直接取材するような仕事を止めてしまった、生身の個人と話をしても仕方がないところでライブと音盤を生産している人達だとわかったからだと思う)
ライブで聴くと、ブレンデルの音はメチャクチャきれいで、達者にピアノを操るオジサンでした。屈折した深みのあることを切々と音で語る、というタイプでは本来ないと思う。
「善良な人」の弾くシューベルトはこれで十分。
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このロシア音楽アルバムは、「五人組」の説明に便利なので授業でよく使います。私は、このCDくらいでしか、もうブレンデルの音を聴かなくなったかも。Alfred Brendel Mussorgsky, Stravinsky, Balakirev
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ハルキがジョージ・セルのヤナーチェクを面白がったのにちょっと似てしまって癪ですが、こういう種類のへその曲がり方は、昭和末期のクラシック・ファンの空気感のなかでは、いかにも凡庸で、ありうる選択肢のひとつだった、ということなのでしょう。
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曲がったへそを真っ直ぐにすれば、すべてをリセットできる、と今も夢想する人にとって、このようなねじ曲がり方は「鼻につく」不快な臭気かもしれませんが、曲がったものは曲がっているし、それにつられて、「地方都市」(という言葉が有効であるかのように社会が編成されて、「街の盛り場」(菊地成孔を銚子で育んだような)を抑圧したのが70年代、80年代であった)の素直な人が無理に屈折するのは不幸なことであった、ご愁傷様、というだけのことだと思う。
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いつの世にも、人間、勘違いして思い入れが空転するのはよくあることです。(例えば、岡田暁生派のモダン・ジャズへの片想い、とか。君たちはどこへ向かおうとしているのか(笑)。)
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日経の批評、今年掲載分の最後はヤンソンスとバイエルン放送響を取り上げます。
ベートーヴェンの交響曲、東京では全部やって、関西では5曲だけの、いわばセミ・チクルスですが、このクラスのオーケストラが関西でこういう風にテーマを絞った複数公演を打つことは、最近では本当に久しくありませんでしたから、その心意気を買いたい、と思いました。