影アナの危機管理

この秋から、コンサートに行くとどこも開演前の影アナが一段落分長くなっているみたい。「災害の際は係員の誘導にしたがって……」云々という同じフレーズをどのホールでも耳にする。正確にこの秋からなのか、もう少し前からやっているかはわからないけれど、コンサートの度に「災害の際は」という言葉を聞かねばならないのは、君が代を公務員が歌うべきか否か、より、はるかに影響は甚大な気がする。ホールのフロア・スタッフは、日に日に、緊急時に全権を握る旅客機の客室乗務員に近づくべく、「担当官庁」の指導が入っているようだ。いいのか?

まあ、劇場は放送局と並んでテロリストが抑えるべき場所なのだから、先に官憲が掌握しておく、これが危機管理の布石、ということかもしれないけれど、不安につけ込む安心の押し売りみたいなこと(ビル・ゲイツ商法?)をやるのはいかがなものか。

補助金等で縛った次はこれ。そのうち江戸時代みたいに劇場が免許制になったりして……。

それは、「ゲージツの名において」とか「文化の名のもとに」とか、「役者の意地」とかで、劇場の「なか」を中立地帯にする思想を崩すことになりはしないか。

それだと、どこの国でも政府の許認可事業であるところの電波産業(放送)と同じになっちゃうよ。

(あっ、これが「ワーグナーはなぜ中立国スイス亡命中に大化けしたのか」問題ですねっ! 中立地帯にいることで、イタリア・オペラのグローバリズムとも、フランスのブルボン王朝以来の中央主権とも、ドイツ的「混合」とも違う何かを考えることができたのかもしれない、と。)