「消費社会」(死語?)の知と欲望のナツメロ化

構造主義や記号論やポスト構造主義のスターたちの名前や発想(含むニューミュージコロジー)が最近の新刊音楽書を飾っているけれど……、

音楽をめぐって新しいビジネス・モデルや攻めの営業であるかのような装いで登場する仕掛けのほうは、

記号消費にたどりついていたらいいほうで、たいていは、衒示的消費(=世紀転換期のブルジョワ生活)とか、他人指向型人間(=1920年代アメリカ)とか、欲望創出の依存効果で限界効用を打ち破れ(=1950年代の広告戦略)とか、疑似イベントのスペクタル社会(=1970以後の開発型産業)とか、懐かしい持ち駒で読み解けてしまいそうで、カルスタ・ポスコロすら必要なさそうな感じがある。

岩波講座 現代社会学〈21〉デザイン・モード・ファッション

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……ということに、17年前の本の最後の吉見俊哉のまとめ論文を読みながら思い至った。

結局、現在の40代50代の方々の脳内が、もうここで止まっているということなのだろうか……。

かつては、ナツメロという風に、現象としての歌・音楽が回顧されたわけだけれど、これからは、「メタ」でシュミラークルな80年代を経験した者らしく、音楽そのものではなく、音楽「について」の考え方や欲望が回顧され、リヴァイヴァルするめんどくさい世の中になるのかしら……。

「意識の高い」人たちは、郷愁の構造もややこしい。なんだか新古今の本歌取りのような感じがする。花も紅葉もなかりけり……。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

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