同じ単語の繰り返し

1週間で続けて3つオペラを観たので、どの公演だったかすぐには思い出せないのだけれど、台本原文が同じ単語(固有名詞)の繰り返しで、2度目はやや強く言う、というような場面で、字幕が

「○○だよ。[改行] そう言ってるだろう。」

という風になっていて(細部の口調は違っているかもしれないが)、わずか数秒のことだけれど、上手いなあ、と感心した。

字幕翻訳(もしくは翻訳一般)では普通のテクニックなのか、この字幕を作った人が巧みなのか、よくわからないのだけれど、たしかにその場面は、「だからそう言ってるじゃないか」的な感じだったんですよね。

オペラのように、台詞の言い回し・口調が楽譜として指定されていて、そこを字幕作成者と歌い手の両方が同じ方向でキャッチしていなければ決めることのできない「わざ」だなあ、と思う。

映画だったら、台詞から何から完成されたフィルムにあとで字幕を当てるわけだから、こういう風な字幕のチューニングをやりやすいとも言えるし、やれなきゃプロじゃないのかもしれないし、ひょっとすると、そうした映画字幕のノウハウを舞台に環流させたテクニックだったりするのかもしれないなあと思う。字幕が踏み込んだ名演技を披露したと言うべきか。