黛敏郎と武満徹

黛敏郎:シンフォニック・ムード/バレエ音楽「舞楽」/曼荼羅交響曲/ルンバ・ラプソディ

黛敏郎:シンフォニック・ムード/バレエ音楽「舞楽」/曼荼羅交響曲/ルンバ・ラプソディ

このCDは買い逃していたことに気付いて購入。片山杜秀の解説をやっと読んだ。

黛敏郎と武満徹のダブル評伝を作れそうな関係を押さえてようやく、片山流戦後音楽史に背骨が通るということでしょうか。右の人と左の人で、江藤淳と大江健三郎みたいな感じだけれど、武満徹が大江と同じくらい偉いかというとちょっと怪しくて、もう一方の黛敏郎は、文学における江藤淳より重要かもしれない。

黛敏郎には戦前のモダニズムとのつながりがしっかりあって、在学中のデビューまでに出会うべき人と出会っている感じですね。(戦時中は橋本國彦、戦後は池内友次郎と伊福部昭に師事して、パリ留学前の「シンフォニック・ムード」は深井史郎の作品と同じ演奏会で初演されたらしい。)

そして武満徹は周りの影響を受け続けた(盗み続けた)人だった一方、黛敏郎は、少なくとも1960年代までは、周りに影響を与える続ける存在だったように見える。

(たとえば大栗裕のコンガの元ネタは黛敏郎の、このCDには入っていないあの曲だな、と気がついたのだけれど、この話は、今は書かない。)

黛敏郎と武満徹は、右と左の問題というよりも、戦後日本が、いつ、どのように「自家発電」を目標に掲げるのを諦めたのか、という話になりそうな気がします。

この二人は1990年代半ばに、ちょうど「戦後50年」を迎えたところで相次いで亡くなりましたが、同じ頃、大江健三郎はノーベル賞を受けて、さらにその先の時代を生き続けているわけですね。

取り替え子 (講談社文庫)

取り替え子 (講談社文庫)

大江・武満の関係は、なんとも80年代っぽい「雨の木」で終わりとは考えない方がいいかもしれない。「武満」銘柄は、今後どんどん値崩れしそうな気がする……。
江藤淳と大江健三郎: 戦後日本の政治と文学 (単行本)

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