アナ・チュマチェンコと仲間達

滋賀県大津市のしがぎんホール。前半はチュマチェンコのヴァイオリン(ピアノ、占部由美子)でベートーヴェンとシューベルト、後半は、この演奏会をプロデュースしたヴァイオリンの玉井菜採さんらが加わってドヴォルザークのピアノ五重奏曲。

22日(火)には同じプログラムで東京公演があるようです。

アナ・チュマチェンコ ヴァイオリン・リサイタル

2007年5月22日(火)午後7時開演、浜離宮朝日ホール。出演:占部由美子(ピアノ)、玉井菜採(ヴァイオリン)、鈴木康浩(ヴィオラ)、上森祥平(チェロ)

  • ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ 第3番 変ホ長調 Op.12-3
  • シューベルト:ヴァイオリンソナタ イ長調 Op.162 D.574
  • ドヴォルジャーク:ピアノ五重奏曲 第2番 イ長調 Op.81
http://www.sonare-art-office.co.jp/ticket.html

ミュンヘン音大の先生として有名な人ですが、十年前に北九州に来て以来の来日公演になるようですね。

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Bayern 4 Klassik (http://www.br-online.de/bayern4/index2.shtml)のストリーミング放送を聴くと、趣味が一貫しているというか、昔ながらの手堅い演奏を選んでいるなあ、といつも感心するのですが、この人のヴァイオリンは、この放送局のある街の音楽という気がしました。

丁寧にひとつずつフレーズを積み重ねていく弾き方で、音圧で圧倒するようなことをしないのは、年齢的に枯れているとかいうのではなくて、たぶん、もともとこういうスタイルなのだろうと思います。

映画で巨大なもの(宇宙船の飛来とか豪華客船の沈没とか)を表すときに、今だったらCGで対象を直接、映像化することもできますが、昔からの手法で、目撃した人間の表情や演技を通して、間接的に対象の巨大さを示すという手法がありますよね。「未知との遭遇」で、未確認飛行物体が飛来すると、リチャード・ドレイファスやフランソワ・トリュフォーがひたすら上を見上げているとか、そういうやり方。

ベートーヴェンのソナタのピアノは、いかにもボンからやって来た「熊のような」新進ピアニストが弾きそうなパートで、今回の占部さんも素晴らしかったのですが、チュマチェンコさんのヴァイオリンは、無理に巨大化してピアノに怪獣映画的に対抗するのではなくて、法外なものに素直に驚いて、普通の人の目線で対応策を柔軟に見つけ出している感じ。こういうやり方でちゃんと「大きな音楽」が成立するんですよね。

これは、お弟子さんの玉井さんがベートーヴェンやバルトークを弾くときの音楽への接し方ともよく似ているな、と思います。

今や東京芸大の准教授の玉井さんの演奏会は、本当に毎回「ハズレ」がなくて、今回も、滋賀公演は玉井さんがプロデュースした「室内楽の醍醐味」というシリーズのひとつですが、玉井さんの演奏のルーツがわかるという点でも興味深い演奏会だと思います。