大栗裕チルドレン(「大阪俗謡による幻想曲」2題、近藤望版ホルン・アンサンブル編曲と武藤好男版パーカッション・アンサンブル編曲)

大栗裕の「大阪俗謡による幻想曲」は原曲が1956年初演の管弦楽曲。今では吹奏楽編曲(主にコンクールでのカット版)で演奏されていますが、関係者の方々の手で様々な編成に再アレンジされているようです。(マンドリン・オーケストラへの編曲は今もよく演奏されるみたい。)

最近、聞く機会のあった2つのご紹介。

一つは先日10/7に豊中市のアクア・ホールであった大阪音楽大学ホルン専攻学生の演奏会。元大フィルで大栗裕先生のお弟子さん近藤望さんの編曲で「俗謡」のホルン・オーケストラ版が演奏されました。

(近藤先生は大栗先生の退団と入れ替わりに大フィルに入団。大栗先生には、1977年、近藤先生の渡欧を記念した「ホルン合奏のための馬子唄による変奏曲又はホルン吹きの休日」という作品もあります。)

舞台にずらりと並ぶホルン専攻の皆さん(今は女性が多いのですね)は、近藤先生の教えを受けているのだから、全員、大栗裕の孫弟子に当たるのだなあ、と思うと、「大栗先生は子だくさん」という妙な感慨にとらわれてしまいました。^^;;

大栗先生のホルンは(のちにフルート&指揮の森正などを出した天王寺商業の吹奏楽から戦時中グルリットのいた現東フィル、戦後尾高尚忠らが振った頃の現N響を経て大フィル入団)、明るい鳴りの良い演奏だったと伝え聞きますが(大フィル定期でモーツァルトの協奏曲を独奏したこともある)、近藤編曲&指揮によるホルン・オーケストラ、あまり硬く決めないサウンドが大栗先生ゆずりなのかなあ、と思いながら聴かせていただきました。

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もう一つは、既に10年前にリリースされているものですが、大阪音大の北野徹先生率いるパーカッショングループ大阪のCD。

打楽器オーケストラ

打楽器オーケストラ

↑アマゾンでは収録曲が載っていませんが、打楽器アンサンブル編曲で、「俗謡」の他に「ツィゴイネルワイゼン」、バッハのニ短調の「トッカータとフーガ」、「シバの女王ベルキス」が入っています。

編曲は、現在、大阪音大副学長の作曲家、武藤好男先生。70年代音大大学院時代、最後のオペラ「ポセイドン仮面祭」(ラテン系で古典派のパロディを含む面白い作品です)の頃に大栗先生についていらっしゃった方です。

解説も武藤先生が書いていて、大栗裕は土俗的と言われ自分でも(照れ隠し気味に)それを認めていたけれど、

実際には巧みに構成された声部進行、斬新な和声、柔軟なリズム処理等、大変に洗練された一面を持っている。

とのご指摘で、これは、私もそう思います。(昨年書いたレポートも、ささやかながら、そういう話をしたいつもりだったのでした。http://www3.osk.3web.ne.jp/~tsiraisi/musicology/article/ohguri-fantasia-osaka.html

「俗謡」というとやはり朝比奈隆・大フィルで、普段この曲を人に説明するとき私は1975年ヨーロッパ公演のCD(大フィル私家版)を使っていて、何といっても大フィル欧州初公演の記念すべき演奏ですし、あくせくしない骨太な朝比奈ブシは味があり、他と置き換えられない一種の決定版ですが……、

武藤先生のアレンジで聴くと、「俗謡」のイメージ(大げさに言えば、おおさかのイメージ)が変わる。聴いてびっくりしました。

マリンバ主体のウッディーなサウンドでペンタトニックのハーモニーがおしゃれに広がって……。

もし大栗先生が長生きして、80年代を経験していたら、「ポセイドン仮面祭」で既に明るい三和音を使うようになっていましたし(ナクソスの大栗裕集に入っている最後の管弦楽曲「大阪のわらべうたによる狂詩曲」のファンファーレもそうですよね)、全然「土俗的」でない曲も残していたのではないか。CDを聴きながら、そんなことまで想像してしまいました。

お薦めです。