びわ湖ホールの「ラ・ボエーム」関連企画に呼んでいただき、歌劇《ラ・ボエーム》セミナー(全3回)の1回目として2/13に大津駅前の滋賀ビルでDVD鑑賞会のナビゲーター、2/20にはプレトークマチネで「ラ・ボエーム」について(実際はプッチーニの人となりについて)30分お話させていただきました。
http://www.biwako-hall.or.jp/event/detail.php?c=9561
この準備で、ミュルジュの原作小説邦訳を取り寄せたり、2/13の企画は「ボエーム」をDVDで全編解説付きで見るという企画でしたので、どの演奏を使うか決めるのに、色々な映像を観て「ボエーム」漬けになったりしておりました。
DVD鑑賞会では、字幕があって、ライブの雰囲気がよく出ているということで、メトロポリタンのカレーラス/ストラータスを使いましたが、
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他に参考資料として、スカラ座のカラヤンのオペラ映画や、パヴァロッティ/クライバーのスカラ座ライブ(字幕があればこれを全編観たかったのですが……)、最近のネトレプコ主演の映画も一部観ていただきました。
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結果的に、メトロポリタンの名作オペラ金ぴか路線、「三大テノール」に代表される有名歌手をブッキングして、豪華絢爛の舞台装置で、連綿とメロドラマを繰り広げるスタイルを観ていただくことになりましたが、反発するにせよ、やっぱりこうでなければと思うにせよ、オペラに莫大なお金が動いた時代に、メジャー感満点のショウビジネスをやり切ったひとつの典型ではあるかと思います。(「冷たい手」をカレーラスが一音下げて歌っているのも、舞台はナマモノだということで……。)
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びわ湖は、ベルリンのホモキ演出を持ってくるそうなので、視覚的にも、音楽的にもシェイプアップした「ボエーム」になりそうですね。全4幕を通して休憩なしで上演すると聞いています。
プッチーニの時代は、一幕ものオペラのコンクールが開催されたり(彼の「妖精ヴィリ」やマスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」はその応募作だった)、幕を番号に分けずに通作されるようになったり、イタリア・オペラに、(1) 幕が開いてから降りるまで途切れることのない持続・推移を、(2) 音楽=作曲家主導で構成する、というトレンドが入ってきた時代、野心的なオペラ作家が、好き嫌いはともかくワーグナーを意識せざるを得なくなっていた時代ですから、全編切らずに演奏するのは、あり得る試みなのかもしれません。
ここぞという場でぐいぐい押して観客の涙腺を直接刺激するよりも、あちこちに仕掛けられた、台本・音楽・演技あいまっての群像劇としての側面が強調されることになるのでしょうか?
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スコアを調べていて思い出したのですが、大栗裕は「プッチーニのスコアは管弦楽法の勉強になる。二管編成なのに四管の音がする」と言っていたそうです。プッチーニのスコアには、交響曲とは違う劇場のオーケストレーションのノウハウが詰まっているということだと思います。
また、武智鉄二は、丸本を読み直すところから歌舞伎演出を組み立て直したのと同じスタンスでオペラのスコアを読もうとしていたようで、おそらく1954年の「お蝶夫人」演出の経験を踏まえてだと思いますが、「プッチーニの音楽には(ヴェルディまでの音楽と違って)舞台の間が作曲されている」という趣旨の発言をしています。
DVD鑑賞会でもお話させていただいたのですが、プッチーニのスコアはイタリアのオペラ歌手に新しい演技術を求めたのではないかと思います。
ヴェルディまでのオペラであれば、(カルーソーがそうであったと伝えられているような)「棒立ち」でもこなすことができたけれど、プッチーニはそうはいかない。カラスやシミオナートのような「演技派」歌手が20世紀半ばに登場したのは、プッチーニ作品が劇場レパートリーに定着したのと相関することだったのではないかと思います。プッチーニのスコアは、いわゆる「純音楽的」に解析するより、劇場・舞台に何を求めているかを読むほうが生産的。
講演の準備をしながら、そんなことも考えました。
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