『作曲家・渡辺岳夫の肖像』

[7/6 一行追記あり。岡田×片山対談本はやっぱり(そのうち)出るみたい。]

渡辺岳夫はアニソンの世界に燦然と輝く方。その筋で既に絶大な支持を得ていらっしゃるようですし、私が何か言うのはおこがましいとわきまえております。

一気に読みました。

作曲家・渡辺岳夫の肖像 ハイジ、ガンダムの音楽を作った男 (P-Vine Books)

作曲家・渡辺岳夫の肖像 ハイジ、ガンダムの音楽を作った男 (P-Vine Books)

  • 作者: 加藤義彦,鈴木啓之,濱田高志
  • 出版社/メーカー: スペースシャワーネットワーク
  • 発売日: 2010/06/18
  • メディア: 単行本
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お父さんが渡邊浦人ですし、やはり、というべきか、片山杜秀さんのコラム寄稿もあり。

ところで、片山さんが書いていらっしゃるお話は、きっと、ここでご披露されたものですよね。

http://www.artespublishing.com/blog/2009/06/04-355

対談本に収録予定とされていたのが先にこっちに出たのは、ひょっとして……。

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昨年の今頃、自分には何の得にもならないのに、狂ったように岡田暁生氏関連の長い長い文章をいっぱい書いていたときには、

http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20090627/p1

「岡田×片山対談をこのタイミングで本にするのは、たぶん、誰も得をしないだろうから、やめておいたらいいのに」とずっと思っておりました。

お二人ともに賞を沢山もらって本が売れていたときに、「批評を斬る」とやったら、それはどうしたって、日本の音楽評論は俺たちが制覇した、という(やや調子にのった)勝利宣言、と受け止められていたに違いないですから……。

血気盛んな若造の所業、勢いでやっちゃいました、というのならともかく(たとえば大昔の、酔っぱらいの暴言集みたいな團伊玖磨・芥川也寸志・黛敏郎の本『現代音楽に関する3人の意見』のように)、それは止めておいたほうがいいんじゃないか、と、ずっと思っていたのです。きっと勢いだけで、その時点で先の展望・展開構想があったわけじゃないでしょうし……。

もちろん今でも、対談本がタイミングを測って出る可能性はまだあるのでしょうけれど。(←追記:出るみたいです、twitterでgenkimuraさんが書いていらっしゃるので。残念(笑)。お忙しいときに、こんなことに反応していただいて、すみません。)

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ちなみに、アルテス・パブリッシングの敏腕編集者、木村元さんのお父様の自伝も最近出ましたね。木村敏先生。

京大音楽研究会時代からの、バリトン歌手・原田茂生氏(昔、中学音楽の鑑賞教材だった、日本語訳詞によるシューベルト「魔王」を歌っている人!)とのつきあいなど、音楽の話もたくさん出ています。

精神医学から臨床哲学へ (シリーズ「自伝」my life my world)

精神医学から臨床哲学へ (シリーズ「自伝」my life my world)

最近、戦後民主主義の見直し的な風潮と関係があるのか、各方面でご活躍された方々が、実は決して平等なスタートラインから出てきたわけではない(日本という国が別に「平等」だったわけではない、かもしれない)ことを自己申告するような本をよく見かける気がします。

総理がああいう人だったわけですし、家系や出自のことを行っても(恵まれた出自である人に関しては)大丈夫という風にルールが変わってきたということでしょうか。

日本のマラーノ文学

日本のマラーノ文学

一方こちらは、出自を明かす/明かさないという葛藤から発生する文学・表現活動の諸相を読もうということで、立原正秋、中上健次、松田優作など戦後の詩人、作家、映画俳優などを論じた本。