7、8月は大阪という街のことをあれこれ考える巡り合わせになりましたが、9月に入って、今度は何かと仏教づいております。
たとえば、本屋で文庫版を見つけて、梅原猛、上山春平編「仏教の思想」12巻全部一気に読んでしまいまして、
知恵と慈悲「ブッダ」―仏教の思想〈1〉 (角川文庫ソフィア)
- 作者: 増谷文雄,梅原猛
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1996/06
- メディア: 文庫
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なるほど、仏教=東洋思想で西洋コンプレックスから解脱するプログラム(作曲の世界にも、そういう系譜がありますよね)とはこういうことか、と60、70年代の雰囲気をのぞかせていただいた気がします。
あるいは、末木文美士先生の概説書を読んでみると、
- 作者: 末木文美士
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/09/02
- メディア: 文庫
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- 作者: 末木文美士
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/04/20
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現行の日本仏教へのアプローチには、主なルートとして、歴史学・宗教学・宗派の教学・民俗学の4つがある、という説明が出てきます。大栗裕との関連で我流に思いつくまま集めつつあった資料・情報を整理する参考になりそうな、きれいな整理だと思いました。
そしてそんなことをしているうちに、今日、本屋でみつけたのは、この本。
- 作者: 森沢義信
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2010/08/04
- メディア: 単行本
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- 作者: 森沢義信
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2010/08/04
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西国三十三所の江戸時代の巡礼ルートを伊勢からスタートして、すべて踏破してしまった記録です。各お寺の由来などを書いた本は多いですが、道中(だけ)に着目したのは珍しいかもしれません。
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松下眞一は、昭和30年代の『音楽芸術』のインタビューで、茨木は何もない。あるのはゴルフ場くらい、と自嘲しつつ、自宅の仕事場から毎日、茨木カンツリー倶楽部まで散歩している、と語っているのですが、わたくしの自宅はその茨木カンツリー(杉原輝雄のホームグランドです)がある丘の裏手にありまして、学生時代、帰りが遅くなって路線バスがなくなってしまうと、JRの駅から茨木カンツリーの脇の道をとぼとぼ歩いて帰宅、ということもありました。
で、丘のふもとを旧西国街道が通っていて、浅野内匠頭も逗留したという本陣が残っている旧宿場集落があり、少し行くと、川端康成が「十六歳の日記」で綴っている祖父を看取った村になるのですが……、
- 作者: 川端康成,羽鳥徹哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/03/10
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『西国三十三所道中の今と昔』を読むと、このあたりは、西国二十二番総持寺から二十三番勝尾寺への順路だったようです。
かつては田んぼの中の一本道が西国街道へ合流していて、そのルートが今はこうなっている等々、ドメスティックに知っている場所が出てきます。
このあたりは、御詠歌があたりに響いていてもおかしくない土地だったようで。(西国三十三所は関西をぐるりと一巡していますから、関西在住の多くの方が、読むと同じような経験をされるのではないかと思います。)私は地元の人間ではないですが、丹念に探せば、何かが語り伝わっているのかも。そんな近世よりもはるか昔の古墳があったり、延喜式の式内社があったりするので、このあたりの歴史はそれどころではなさそうですが……。
ひとつの札所からもうひとつの札所へ至る道筋のごく一部分がこれだけの距離、ということから類推すると、三十三所全ルートを歩くのは、現代の日常感覚ではちょっと考えられない遥かな道のり。巡礼というのはそういうものなのでしょうけれど……。御詠歌の、万感が染み込んで、いつ果てるともなく気の長い節回しは、この途方もない距離を歩く時間感覚から生まれたのかな、と思いました。五来重の言う「歩く宗教」ですね。
森沢さんの本は山椒大夫を紹介していますが、ここでは小栗判官がクローズアップされています。西国巡礼順路とは別の、大阪→熊野古道と結びつけられた説経節ですが、土車で熊野へたどり着く話……。
- 作者: 五来重
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/12/11
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実は『……道中の今と昔』を読んで一番びっくりしたのは、本のあとがきに、某新聞のお仕事でかつて担当をしていただき本当にお世話になった方のお名前が記されていたことなのですが、それはともかく、
来週には、西国街道の茨木で、御詠歌が出てくる大栗裕の「ごんぎつね」をやることになっていて、同じ日に、茨木から遠く離れたお江戸(江戸時代の旅といえば、弥次喜多道中というのもありましたね)では松下眞一ですから、このタイミングでこういう本を見つけてしまったのも、何かのご縁であろうかと思います。
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それにしても、
ほんの少しのぞいただけでこういう話が出てくるのは、北摂の丘陵地帯の歴史の結末。過去の因縁やコンテクストを一切無視して、万博時代に即席開発・大量植民した国策のツケが、40年後に回ってきているのでしょうか。
あたり一帯をきれいに整地をして、アスファルトで舗装したはずなのに、経年変化であっちこっちに割れ目ができて、埋めたはずのものがボロボロ涌いて出てきているのを見るような気がします。
全部まとめて州にしてしまいたい府知事さんとか、お金をたくさん集めて雇用を創出したい総理さんとかは、なんとなく、借金してでも全部もう一回埋めちゃえばいい、国土が真っ平らになるのが理想、というお考えであるような感じがしますが……。西国巡礼ルートが、山の廃道になっていたり、今は車がビュンビュン通る国道だったり、自衛隊の演習場になっていたり、という淡々とした記述を読んでいると、ここはデコボコに入りくんだ複雑な島、すっきり道を通そうとすると、ものすごく強引なことになるのだなあ、と思います。
(ヴィラ=ロボスは、若い頃ショーロ楽団でほぼブラジル全土を回ったらしく、あの底知れない感じはそれだと思うのですが、田中角栄の薫陶を受けて全国の選挙区周りをしたかつての若き自民党幹事長氏は、きっと日本のデコボコの詳細をつぶさに見て知っているのでしょうね……。そして茨木に生まれて、郷土愛ということを言いつつ万博に関わった松下眞一は結局どういう人だったのか、ますますわからなくなるのですが……。西国街道は茨木の町の中心を通っているわけではなくて、中心街に住んでいた松下眞一が竹林の茨木ということを言ったりするのは、さらに細かくねじれている様な気もしますし。)