21世紀は誰の世紀? センチュリー交響楽団改称報道

朝日新聞に来年4月、大阪センチュリー交響楽団改称、の記事が出たようですね。

http://www.asahi.com/culture/update/0917/OSK201009170087.html?ref=rss

大阪府の支援が切れるので、名前から「大阪」を外して、「日本センチュリー交響楽団」として、府外でも活動を展開する予定なのだとか。

「オーケストラの顔」のような存在だったコントラバスの奥田一夫さんの不慮の事故があって、やりきれない雰囲気のところに、災い転じて、の前向きな話題、ということになるでしょうか。

でも、「日本」なのですね。

大阪府庁が湾岸コスモタワーの大阪ワールドトレードセンター(WTC)に移転するアイデアを出したりして、向こうが「コスモス」とか「ワールド」なのだから、こっちも、せめてかけ声だけでも、アジア全域に視野を広げる、というくらい大きく出てもよかったのではないか、個人の能力が高い楽団なのだから、地方回りより、海外進出のほうが似合いそうなのに、と思ってしまいました。

それに、これまでの学校回りで府下の先生方の支持が厚いようですから、日の丸な感じの「日本の世紀」よりも、「21世紀はアジアの世紀」くらい大きく出たほうが、右からも左からも共感されそう。市民運動や全共闘出身の現与党・勝ち組政治家さんが応援してくれるかもしれないし、新作を書いてくれた高橋悠治や西村朗にも喜ばれそうじゃないですか。

楽員をアジア全域に派遣して、各地にちらばったメンバーが同時に演奏する音をネット回線でつないで聞くパフォーマンスを展開する(壮大なようでいて、実は日本より物価が安くて、経費はそれほどかからない)とか。

せっかくこれまで、応援する会作りとか、大きく話を広げる戦略でやってきたのだから、どうせだったら、ここで最大の花火を打ち上げて、勢いをつけて欲しかったなあ、と思ってしまいました。

具体的なビジネス・モデルは私にはわからないので、イメージだけですが、日本のオーケストラで、そういう風にはっきりアジア志向のところは、たぶんまだないですよね。一番乗りのチャンスなのでは? 革命の英雄の名前がついた南米のオーケストラに対抗して、是非ともセンチュリーには、アジア・ナンバーワンの商品を目指していただきたいです。

(威勢がよければいい、としか考えていない思いつきの放言ですが。)

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[追記、ここまでのインチキ経済アナリスト(アジアにいい話があるんですよ系の)みたいな話を離れて、以下もうちょっと別の視点から]

ここ数年で大阪の各オーケストラのキャラクターの差別化がはっきりしてきたように思います。

大阪フィルは大阪城や御堂筋でコンサートをやる大阪市のオーケストラ(これは関西交響楽団の原点にもかなう在り方、老舗の二代目な感じです)。大阪交響楽団(旧シンフォニカー)は、河内長野や堺と提携している大阪の南半分、泉州河内のオーケストラ。関西フィルは、近畿一円をくまなくまわるフットワークの軽い行商人のようなオーケストラで、そうやってコツコツ貯めたお金で、ドンとデュメイ(意外にトレーナーができる人だったのは驚き)を雇う度胸もある。

センチュリーは豊中服部緑地に拠点があって、千里北摂のオーケストラになるのかな、と思っていたのですが、今後は福井、三重でも定期の予定とのことなので、そうすると関西フィルとどう違うのかが、朝日の記事だけだと、まだよくわかりません。

沼尻さんが首席客演なので、びわ湖ホールの滋賀を含めて、近畿と中部の境目の稜線を日本海から太平洋まで縦断する地域に展開するということなのでしょうか。だとしたら、戦国時代に誰が京都を制するかで群雄割拠した地域ですし、なるほど「日本」の隠れた枢軸かもしれませんね。国盗り物語オーケストラ。音楽の天下布武。そういえば、沼尻さんは名古屋でも振ってらっしゃいましたし、小泉和裕さんは、天守閣から下々を睥睨する絵が似合うような気もします。京都のご出身といっても、どちらかというと聚楽第、黄金の茶室、絢爛たる狩野派系な感じがして……。

(あるいは、近畿諸府県を州にまとめて、首都を広々として空港のある千里丘陵に置けばいい、という夢が北摂では万博以来語られ続けているようですから、センチュリーは、大阪府をはなれて、むしろ一層はっきり道州制のミッションと連動したオーケストラになるのかもしれませんね。北摂と福井と三重を結んで、近畿はひとつをアピールする、と。これはこれで、夢をふくらませてはいるのでしょうか。……どちらにしても、通俗歴史小説に毒されたオヤジの昭和の香りがする妄想床屋談義です。いまどき吉川英治や山岡荘八ではあるまいに。^^;;)