ドサクサにまぎれた人々

芸術選奨、文化庁の発表は11日。その時点での報道によると、贈呈式は17日。この日こういうことがあった記録として、書きとめておくことにします。

受賞者と主な業績は次の通り。(敬称略)
◇文部科学大臣賞
[…中略…]
【音楽】[……]▽指揮者沼尻竜典(46)=「ラ・ボエーム」
【芸術振興】作曲家三輪眞弘(52)=「三輪眞弘音楽藝術―全思考1998―2010」
【評論等】[……]▽東京大大学院教授渡辺裕(57)=「歌う国民 唱歌、校歌、うたごえ」

http://www.asahi.com/culture/update/0311/TKY201103110702.html

渡辺裕が新書一冊で文部大臣賞……。この機会に、あなたが阪神淡路大震災のあとでどのように振る舞ったか(「震災と音楽」の、いわゆる「定点観測」でしたっけ……)、きちんと総括して、そのうえで、今後の言動がなされるものと期待しております。

音楽とは振動であり、音楽に携わる者は、平時から振動と正対する覚悟で生きている。わたくしの考えは、そのときも今も変わりません。

フルトヴェングラー (筑摩選書)

フルトヴェングラー (筑摩選書)

著者が文中に挿入する感想・判断には賛同できないところがあれこれありますが、個々の行事・音楽会の情報が具体的に調べてあって、フルトヴェングラーや他の音楽家たちが、ワイマール共和国や第三帝国で、絶えず踏み絵を踏まされていた(あるいは、変な言い方ですが、踏み絵を次々踏んでいた?)ことがわかる。

[追記1]

芸術選奨の受賞者一覧(選考委員名簿つき)

http://naokiaward.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-9b76.html

「評論その他部門」の選考委員and/or推薦委員に、毎年、音楽学・音楽評論関係者がいつも1名程度入っているようですね。

[追記2]

「芸術振興」部門で受賞した三輪眞弘さんについて。

http://www.artespublishing.com/blog/2011/03/14-839

一口に芸術選奨といっても、部門ごとに選考委員は違うし、[追記1]リンク先本文にある文学賞の立ち上げ経緯など、各部門ごとの事情も様々であるようです。

現状、音楽関係の選考委員は芸術祭公演の審査経験者が少なくないように思われ、芸術祭を踏まえた上での上位の顕彰という位置づけになっているのでしょうか。そこが、芸術祭に部門をもたない文学・評論とは違うところかもしれませんね。

音楽評論の最近の受賞作をみていると、「うっかり」「ちゃっかり」「まんまと」という形容がどうしても思い浮かんでしまいます。たまたま、つけ込まれてしまいやすい主催者側の布陣になってしまっただけのことなのかもしれませんが、受賞作の名前だけが報道されると、まるで、「今は、めざとくスキにつけ込むことが推奨されているのですよ!」と世間へアナウンスしているかのように見えてしまう。「震災前」はそういう時代であったということなのでしょう。