『アマデウス』公開当時に、音楽映画、しかも素敵なモーツァルト、という動機で観に行って、それでおしまい、というのはいかがなものか、という発言を読んだ記憶があるのですが……、
懲りない無知なわたくしは、「ゴヤ、スペインだ♪」というミーハーな関心からこれを観てしまいました。
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ミロシュ・フォアマン(Miloš Forman、本名:Jan Tomáš Forman、1932年2月18日 - )は、チェコスロヴァキア出身のアメリカ合衆国の映画監督。
チャースラフ生まれ。第二次大戦中はプロテスタントの両親に育てられたが[1]、実の父がユダヤ人の建築家オットー・コーンであった事を後に知る[2]。養父ルドルフ・フォルマンは大学教授だが反ナチ思想の持ち主としてゲシュタポから尋問を受けた後、禁書を学生に配った罪で逮捕され、ブーヘンヴァルトで死亡。母もアウシュヴィッツで亡くなった。
ミロス・フォアマン - Wikipedia
DVDのジャケット等にはナタリー・ポートマンの美少女メイクの姿しか出ていませんが、実際に映画がはじまってみると……。
ゴヤが主役なのではなく、「ゴヤが見たもの」が画面に映し出されるのですね。異端審問が復活した末期症状の王政〜ナポレオン時代〜王政復古と政情が二転三転するなかで、「政治的正しさ」は、何がヒトであり、何がヒトとして存在するはずのない幽霊であるかを認定し、「政治的正しさ」が転換すると、幽霊であったものがヒトになり、ヒトであったものが幽霊になる。だから原題はGoya's Ghosts(ゴヤの幽霊たち)。
「カッコーの巣の上で」と同じく、こちらにも精神病院が出てきますね。
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「存在するはずのない者」は、すなわち、存在しないのである(←ややこしい言い方ですが)というように振る舞う大人たちが画面を支配していて、そのように振る舞う人々は、時代考証を踏まえた舞台衣装でガッチリと身を固めて、ある時代のある空間にその身体が埋め込まれるようにして「存在」している。そして「存在するはずのない者たち」は、アマデウス君のようにケタケタと高笑いして音楽という見えないものを弄び、ナタリー・ポートマンのようにひとりで二役三様に変身したりして、縦横無尽に動き回る。それがこの人のコスプレ、コスチューム・ドラマということでしょうか。
そういえば、ナチス・ドイツも、あのカーキ色の「コスチューム」で視覚的に表象される集団ですね……。
『ゴヤ』では、二転三転して、コスプレな人々はどれが善玉でどれが悪玉なのか、白黒が失調してしまうところまで行きますが、それはスペインものだからなのか、チェコもそういう状態だったのか。
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オペラのことをあれこれ調べるなかで、時代ものの舞台衣装(theatrical costumeと言うらしい)とは何なんだろう、オペラの舞台に立つ方々には、ある種の「コスプレ」を肯定する気質があると言っていいのだろうか(ちなみにコスチューム・プレイは和製英語で、時代考証した舞台衣装を身にまとう映画やドラマのことはcostume dramaと言うらしい)などと考えをめぐらしまして、
少し前には、フランスのバロック宮廷もので豪奢な衣装を身にまとって、サヴァールや、ゲーベル&ムジカ・アンティカ・ケルンといった古楽の人たちをフィーチャーした映画が次々でたけれど、あれは何だったのだろうと思い、
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さらに遡って、「アマデウス」のコスチュームは凄かったけれど、あの映画が突如出現したのはどういうことだったのかと調べるうちに、ミロシュ・フォアマンに行き当たったのでした。
モーツァルト、とか、ゴヤ、とか、人が関心をもちそうな名前で集客して、豪勢なコスプレを展開しながら、スクリーン上で動くのは「存在してはならない者」なんですね。