[付記:以下に書くのは、アマチュア相手の指導で、ときに偏っていたり、時代遅れであったりする方針が長年支持され、存続することがあるのは何故だろう、というお話、いわばレッスン・プロをめぐる考察の入口めいた短文です。
ただしこれは、レッスン・プロが自らの実力で勝負するトーナメント・プロとは別の職種だと言っているに過ぎず、私は、両者の非対称的な関係が解消されるべきとは思っていません。
著名なトーナメント・プロのほうが(指導がヘタクソだとしても)弟子を集めやすいのは世の常だし、レッスン・プロが、いかに指導者として圧倒的な実績を残しても、そのことでトーナメントのシード権を得る、みたいになったら話がおかしい。
大学における研究と教育の悩ましい関係を考えるメタファーになり得る「かも」しれませんが、あまり未来への提言とか大それたことは考えていなくて、昭和の末期の学校時代の自分自身に見えていた「プロの先生」たちとアマチュア愛好家の関係はこんな風ではなかったか、と反省的に考察したに過ぎません。「カルスタ」は、ちょうどこんな風に、大英帝国の労働者階級出身特待生だった学者さんたちが、自らの体験をにじませつつ労働者の文化の過去と現在を綴ったところからスタートしたらしいですし。→参考:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20130623/p1 ]
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カルチュラル・スタディーズ黎明期の諸研究をざっくり眺めながら、わたくしが関心をもてそうなトピックは、失われた古き良き時代の労働者文化の描写にしばしば出てくる金管バンドのお話かなあ、と思いました。
ブラスバンドの社会史―軍楽隊から歌伴へ (青弓社ライブラリー)
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一連の話の締めはこれだ、と目星を付けているのですが、細川周平さんが『ブラスバンドの社会史』を出したときから十年以上経って、どうやら、英国金管バンドの研究はさらに爆発的に増殖している様子。
The British Brass Band: A Musical and Social History
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軍楽隊との関わりがどうなっていて、他国との交流などはどうなのか等々、ブラスバンド研究をボーダーレスに泳ぐのは、本気でやると一生の仕事になりそうですね。
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関連して、少し前に武道系スポーツの本を読んで、強く印象に残ったのは、こういう、やや特殊なエートスを温存するサークル活動が意外に長続きするのは、団体としては存続しても参加メンバー(指導する側ではなくされる側)が「期間限定」でどんどん入れ替わるからだ、という有山輝雄先生のクールなご指摘。
甲子園野球と日本人―メディアのつくったイベント (歴史文化ライブラリー)
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「体育会系」だったり、「ハード」だったりするクラブ、サークルが存続できるのは、必ずしも「好き」だったり「自分に向いている」からとは限らない。逆に、中学高校の数年間だけの経験として、未知の分野に挑戦してみよう、という動機付けがあり得て、期間限定だから(=出口があるから)特殊なエートスに耐えられるのではないか、という分析なんですね。
「期間限定」、人生の通過点なカリキュラムというのは、指導する側と指導される側が一心同体じゃなくてもいい、同じ目的に向けて効率的に最適化されていることが必須ではないかもしれなくて、
「3年間、4年間だけのことだから、とりあえず、これでいってみよう」
と思ってもらえればいいんだ、ということでもあり、逆に、「期間限定」だからこそ、やや理想論すぎるかもしれない高邁な目標をかかげて、チャレンジしたっていいんじゃないか、ということですね。
(そしてこれはもちろん、その期間が終わったあとまでしつこくつきまとってはいけない。生涯まとわりついて「トラウマ」化しないためには、さらっと終わる形になっていたほうがいい、ということでもあるでしょう。)
言うは易し、なのでしょうが。
そして、わたくしは、手加減とか妥協とか、そういうのは苦手なので、人の指導に向いていないと自覚しておりますが。