「CD/音楽専用ホール」時代の次に来るもの

たぶん「まるでCDを聴いているかのようにクリアなライブ演奏」というのがあって、いわゆる音楽専用ホール(「残響○○秒」を謳うこの種の空間は、ほぼCDと同時期に登場した)は、このスタイルに最適だった。

旧フェスティバルホールで、野暮ったいかもしれないけれども朝比奈さんを中心にそれとは違うタイプの演奏をやっていた大フィルが、大植時代にシンフォニーホールに定期を移して10年。大フィルだって「やればできる」を示した集大成が、今回の戦争レクイエム by 下野竜也ではないか、という気がします。(遂に、「拍手のやり方」の紙をパンフレットに入れる、ということまでやった。)

何やら「厳戒態勢」感があって、私個人は好きではないけれども、一度徹底的に「CD/音楽専用ホール」スタイルを極めておくのは、確かに意味があったかもしれないと思います。

でも、たぶん新しいフェスティバルホールで2日で5000人のお客さんを集めるために必要なものは、これとはまた違うところにポイントがありそう。

そしておそらくそれは、無音状態から「CDの音楽」が浮かび上がるのを楽しむリスナーさん(その種の人達はこれから確実に「高齢化」していく)と、YouTubeの圧縮音源をパソコンやスマホのスピーカーで動画付きで楽しむ人とでは、ライブ体験に求めるものが違うだろうということでもあると思う。

まあ、わからんものを無理に理論化してもしょうがないので、新しい環境でやりながら、ツボを見つけていくことになるのだと思いますが、とりあえず、広々とした空間を音が飛び交って、いわば「音でドンパチやる」楽しみが大きな場所にはありそうな気がします。

それは、精密に設計された空間にぴったり音をあてはめて、ノイズをきれいに掃き清めるのとは、また違ったことになるはず。

そういう意味で、私は今回の定期演奏会を、これまでの総決算、これから何かが変わる転換点になるのだろうと思いながら、聴かせていただきました。