弱音力

サントリーのエッセンツィアは、結局、今あのホールでマイペースに静かに何かに取り組むのは無理な状態になっていて、3年がかりでお客さんは入らなくてもいいからベートーヴェンをやりたい、とか、結果はどうなるかわからないけれども何かやってくれそうな旬の作曲家にフリーハンドで個展を開かせたい、と思っても、必ず宣伝係の人にみつかっちゃって、拡声器でアナウンスされちゃってオオゴトになっちゃうところがあって、そのあたりが絡んだ悲劇だと思う。

あそこは、何でも見境なくオオゴトにされちゃう場所なんだ、と最初から覚悟して話を持ち込むしかない。

デカい音を見境なく出すだけならアマチュアでもできる。観客の受けはよくないかもしれないけれども、腹筋でぐっとこらえて、弱音を美しく持続するところからプロの仕事がはじまる。ジャンルを問わず音楽とはそういうもので、イザベル・ファウストやピリスや伊東信宏(ボソボソ)が玄人受けするのもそういうことなわけだが、世の中にはそれが通じない場所がある。というより、そういう場所のほうが多い。

だから、ああ、やっぱりこうなったか、ということに過ぎないわけだが(笑)。

おじいちゃんおばあちゃんに話すときには、はっきり大きな声でゆっくり言わないとダメ。「意識高い系の消費者さん」も、たぶん同じなのでしょう。(ボケてないもん、というプライドがある分、さらに一層注意深い対応が必要だが。)