『現代音楽の創造者たち』

シュトゥッケンシュミットの本を大学へ返却する期限が迫ってきたので慌てて読んだら、昭和34年に吉田秀和訳で出た『現代音楽の創造者たち』(原著 Schöpfer der Neuen Musik. Portraits und Studien, Frankfurt: Suhrkamp, 1958)が一番よく出来ているように思った。執筆当時のアクチュアルな話ではなく、そのひとつ前の世紀転換期から戦間期の「新音楽」の話。「新音楽」を切り開いた大家たちのポートレイトがめちゃくちゃ上手に書いてあった。

ストラヴィンスキーは中国のパズルみたいだ、とか、シェーンベルクほど確固たるスタイルを持った音楽家はいない、とか、比喩が秀逸。

こういう風に音楽家たちをくっきりしたイメージ/構図に収めることができる時代だったからこそ、左翼人民戦線な人たちが、「アヴァンギャルドvsキッチュ/フェチ」と、もっともらしい論陣を張ることができたのでしょう。美術のほうも、同じように綺羅星のようにスターを輩出して、画商が活躍した時代ですもんね。