余談

ちなみに、その人(変な憶測の呼び水になっていけないが、大学教授である、とだけひとまず書いておく)は、戸田くんのことで私に意見するときに、

「キミだって、若い駆け出しで書いていたころ、小石さんから、ツブすようなイジワルされたことはないでしょう、キミももう中堅なんだから」

と言った。

これもややこしい話で、そういうことを言ったご本人は、批評の仕事をはじめるときに、事前に人を介して小石さんに「ご挨拶」をしたそうなのだけれど、私はそういう根回しは一切していないし……。

むしろ大事なことは、若い人間を抜擢するときに、誰かが「何かあったらオレが責任を持つから存分にやれ」と暗黙のうちにであれ、保護者を買って出るものだった、ということだと思う。(場合によっては、こっちがお願いしたわけではなくても、そういう立場を買って出る人がいたりした。)

今どきはそうではなくて、「若手相手にそういうことをしてはいけない」等という言葉が一般的な暗黙のモラルとして発話される。(そのような発話に、明示的であれ暗黙であれ、「彼のことは私が責任をもつから」という担保が含まれることは、ほぼ、ない。今回の発話も、そういう趣旨のものではなかった。)

若手さんのほうも、昔風の保護者を買って出るオトナなど今はいないことがわかっていて、だから、いわゆる「横の絆」を大事にするんだと思う。株を持ち合ったり、お互いがお互いの連帯保証人になるかのような横の連携を、大学に所属している間に研究会とかなんとかで構築するみたいですよね。

そうなると、「若手のことをもっと考えろ」と意見された側も困るわけですよ。

何かあったらどうするねん、という話や。若者の「横の絆」は、それほど大きな責任を負えるしくみじゃないし、今現在その人が絡め取られているかもしれない状況がどうなっとるのか、個別に見極めなければ、どうにもならん。無保証で若手を信じろといわれても、教授、それは殺生な話ですがな。

(それに……、いきなり大阪を代表する音楽堂のPR誌に見開き2面ぶち抜きの文章で華々しく登場、は、若手を大事の育てる、の思想とは随分違う大胆な押し出し方だし、書く方も書かせたり応援したりするほうも、それなりに周到に準備すべきでしょう。そこがちゃんとできていたかどうか。先生も、ご自身が若い駆けだしのころは、随分慎重にひとつずつ駒を進めてはったやないですか。「育てる」ゆうのは、同じような環境を、自分自身が身体張って作ってあげる、というのを含むんとちゃいますやろか。生意気なこと言って申し訳ないですけど。)

逆に私は、他人とは、お金であれ信用であれモノであれ、「貸し借り」とか、「先物買い」とかはしない主義。掛け値なしの現金取引がモットーですわ。ハイリスク・ハイリターンのギャンブル、手を出したら一発で「生きるか死ぬか」、なんていうのはしません。

で、だからその分、裏表なし、正直にそう思ったことしか言いません。

「もし本当にそういう案件なのだとしたら、おそらく、戸田さんような立場の人にとっては、取り組み甲斐のある課題、結構なことではなかろうかと思います。」

は、思惑とか取引とか裏表とか一切なしに、提示された情報をもとに、私の判断として、そう思ってますからね。

手加減はしないけれど、それはいいことやってる、と思ったら、そういう風に言うし、納得できることをやってたら、邪魔などするはずがない。

誰が何をどういう風に言うてきても、掛け値なしの現金取引では、それしかできまへんわ。