「憂鬱と官能を教えた学校」

最初の方を少し見ただけですが、とても面白い、というか、とても上手な講義だと思いました。

メシアンを聴かせて、「今かっこうが鳴きましたよね」と楽しんでしまう呼吸とかを含めて、今、現場で音楽理論を教えるとしたら、こういうスタンスになるでしょうね。

「音響」と「音韻」という区別を最初に提示したのが、話をスムーズに進めるキーポイントなのでしょうか。

でも、この切り口を、「大文字のなんとか」(=観念)VS「現場」・「実践」、といった80年代(渡辺博、庄野進世代)の構図でとらえると、多分、全然、面白くないと思います。

そういうドクマ批判では、話が先に進まない、というところから、この試みが出発しているように思いました。

もし書評するとしたら、案外、大変な本かもしれませんね。(論評しなくても、読んで刺激を受けて元気になれば、それで良いという気もしますが。)

菊地成孔、大谷能生「憂鬱と官能を教えた学校」ISBN:4309267807