適材適所（川崎弘二編著『黛敏郎の電子音楽』、「松下真一:カンツォーナ・ダ・ソナーレ第1番他」）

黛敏郎の電子音楽

松下真一:カンツォーナ・ダ・ソナーレ第1番 (1960 初演 若杉弘指揮)/ゲシュタルト17 (1970)/ピアノ四重奏のための「結晶」(1968 初演) 他

大栗裕のことを調べるにつれて、その周辺で「どうしてこんなに面白いトピックが放置されているのだろう、もったいない」と思うことが次々出てくるのですが、どうやら、私ごときが気づくことは他の方々もとうに気づいていらっしゃったようで、最近、次々色々な企画が出てくるようになりましたね。

• 池内友次郎の音楽とその流派
• 諸井三郎とその門下の音楽

タワーレコードは、かつてLPで出ていた「池内友次郎の音楽とその流派」、「諸井三郎とその門下の音楽」をCD化していますし、芥川也寸志のオペラ「ヒロシマのオルフェ」（オーケストラ・ニッポニカ、演奏会形式）のライブCDが発売されています。

芥川也寸志:ヒロシマのオルフェ、音楽と舞 による映像絵巻「月」

そして、黛敏郎の電子音楽。京都芸術センターでのコンサートは行き損ねましたが、そこで配付された本が一般にも売られていて、これは川崎弘二さんが編纂しているだけあって、目配りのゆきとどいた内容。

電子音楽だけでなく、涅槃交響曲に関する論考も、そこが知りたかった、というポイントを確実に押さえた内容になっていました。

どの音がどの梵鐘にもとづくのか「合成音」を調べ上げて黛自身の発言と照合するとか、彼が参照したと名前を挙げているお寺の鐘を実際に音響分析してみるとかいうことは、この作品に関して真っ先に気になることですし、一度調べてみたいと誰もが思うこと。これでようやく、黛敏郎を考えるための基礎が整った気がしました。

黛敏郎:涅槃交響曲

そして松下眞一のCDは、ナクソス・ジャパンのNHKラジオ「現代の音楽」音源リマスタリング・シリーズの一枚。曲目解説は、作曲者の長女、芝池陽子さんですが、既存の文献に出ていない情報が含まれていますし、なによりも、全体の文章のトーンがご遺族でなければ書き得ないものだと思います。松下眞一については、まだまだ、ご遺族からお伺いしなければならないことがたくさんありそうですね。

三善晃:混声合唱と管弦楽のための「詩篇」[初演](1979 小林研一郎指揮)/レクィエム[初演](1971 岩城宏之指揮)

諸井 誠:第1室内カンタータ(1959 放送初演 岩城宏之指揮)/対話五題(1964 初演 酒井竹保,酒井松道)/レ・ファルス(1970 黒沼ユリ子)/ ピアノ協奏曲第1番(1966 森正指揮) 他