日本センチュリーの夏休みバード・フェスタ:ブルジョワとブリバエフ

センチュリーの定期でトロンボーン協奏曲(いかにも原案は吹奏楽という感じの曲調)が演奏された作曲家ブルジョワという人のことは、前に吹奏楽曲を解説したことがあったはず、と確認したら2013年春の大阪音大の吹奏楽演奏会(丸谷先生が大栗裕イヤーの締めで大阪俗謡による幻想曲を取り上げてくださった!)のメインが、デリク・ブルジョワのコッツウォルド・シンフォニーだったのでした。

そのときの白石知雄さんの解説によると(笑)、

デリク・ブルジョワ(1941〜)は、ケンブリッジ大学と王立音楽院で作曲を学び、これまでに交響曲72曲を含む100以上の管弦楽作品を書いたそうです。羨ましい順風満帆の人生ですが、作品には、英国人らしい皮肉や辛口の批評性も感じられます。グロスタシャの丘陵地帯コッツウォルドのストラウド音楽祭から委嘱された交響曲第6番の吹奏楽版で、全6楽章が切れ目なく演奏されます。

ということだそうです。交響曲72曲とは、どういうことか。これこそ、大久保賢に「マジメにやれ」と叱って欲しい(笑)。

コッツウォルド・シンフォニーは、ご当地の自然描写ではじまるのだけれど、

第4楽章「教会の鐘」には、「グロスタシャにおける神のごとく間違いなく」という地元出身のアイヴァー・ガーニー(1890〜1937)の言葉が添えられ、ここから作品は、この作曲家兼詩人の表現世界へ引き寄せられます。ガーニーは、作曲家として将来を嘱望されますが、第一次世界大戦に従軍して毒ガスを吸ってしまい、闘病生活を余儀なくされます。彼は作曲と平行して詩作を行い、平和な田園を蹂躙する戦争を告発しました。前の楽章での軍隊の侵入も、実はガーニーの主張を踏まえたものだったようです。

という仕掛けがあって、えらく大げさに終わる曲だった。

吹奏楽系は曲や作曲家に「定説」みたいのがないことが多いので、曲目解説も調べ甲斐がありますね。通り一遍の履歴書みたいのでなく、曲や作曲家の「キャラ」がくっきり立てられるように何か絶対に探してやるぞ、とファイトが沸く。(私だけ?)

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今回の指揮者は、私はこれまで聞けずにいたのですが既にセンチュリーとは数回共演しているようで、たぶん、それが良かったから首席客演の肩書きが付くことになったんでしょうね。

レスピーギの「鳥」を聴きながら、もっとダイナミックな曲が本当は合うんだろうな、と推察。おそらく、もう何度目かの共演だし、夏(ヨーロッパの感覚だと休暇の真っ最中のサマー・コンサート?)だから、鳥とか伝説とか童話とか、ブラスバンド・テイストとか、「敢えて」そういうチョイスになったんでしょう。で、カジュアルなコンサートのつもりだったのが、あとから肩書きがついて、「就任披露」みたいになっちゃった、それだけのことだったんじゃないかという感じがしました。

あんまり、お披露目を正装で検分する、とか、そんな感じじゃなかったっすよね。(裃に烏帽子で大々的な襲名興行が1年続く感じの首席指揮者氏との対照がすごい。)

すでに相思相愛のカップルで、たまたま私らが初めて彼らに出会ったのは、夏のキャンプ場だった。向こうはTシャツに半パンでバード・ウォッチングとかやってるし、こんなところで「君は将来をどう考えているのかね」とか質問するのは場違いこの上なく、今さら品定めでもなかろう、みたいな感じ。

ここに至る経過を考えたら、「まだ出会ったばかりでかみ合わないウブな感じ」であるはずもなく(お互い子供じゃないんだから、やることはやってると考えるのが自然であろう(笑))、もうちょっと人前ではちゃんとしなさいよ、な感じを含めたカップルの日常を気にせずそのまま見せたのでしょう。

肩書きとその序列が重要な「ネオ社交界」の価値観だと、物事が全然違って見えるのかもしれないが(もしかして、「ネオ社交界」の人たちは、裃に烏帽子の大仰とサマー・コンサートのカジュアルの対照を実力に見合ったそれぞれの「格」の違いと受け止めて、「あなたも頑張って、いつかブラームスやマーラーを立派に指揮できるようになってくださいね」と真顔で激励したりするのだろうか……)、でも、最近の若者は、いつのまにか同棲しちゃったりするらしいっすよ(笑)。

(「あなたたち何やってるの! ○○という御曹司と結納を交わしたばかりなのに……」とか。)

あかんやつら 東映京都撮影所血風録

あかんやつら 東映京都撮影所血風録

仮に、老舗の貫禄・興行界の王道な感じの大フィルが松竹(小津安二郎から大島渚まで、METライブ・ビューイングも松竹で、大フィルは昔ホントに大阪歌舞伎座や系列映画館での演奏会も試みた)。一方、阪急沿線の兵庫芸文が東京宝塚=東宝(ゴジラの特撮と世界のクロサワ)だとしたら、センチュリーは、お正月興行を盛り上げる華麗なスターシステムの東映か(京都太秦映画村! 「ヤマト」をヒットさせた東映まんがまつりというのもある)。

会場(上映館?)も、肥後橋のフェスティバルホール=大フィル、西宮の芸文センター=佐渡裕と仲間たち、福島のザ・シンフォニーホール=センチュリーと場所が分かれて、それぞれのキャラが明快になりました。