物体の移動には時間がかかるのを知っていますか?

もしも将来コンサートが死滅して、音楽は全部録音を手元の再生装置で聴くしかなくなったとしたら、20世紀のライブ録音を聴いて、「なぜ演奏の前に長々と拍手が続くのか、仰々しい」と文句を言う人が出るかもしれない。

コンサートがない世界の人には、演奏家が広い舞台の袖から中央まで歩くと数秒(以上)かかることがわからないからしょうがない。

で、19世紀の舞台機構で転換にどれくらい時間がかかって、当時のいかつい衣装を来た状態での動きがどれくらいの速度で、客席に届けるのに適正な台詞の語りがどれくらいの速さだったかということは、正確にはもうわからない。

でも20世紀の実況録音に長い拍手が記録されてしまっているように、19世紀のオペラの楽譜は当時の舞台の間合いで書いてある。

そこが、数ある音楽劇のなかでも、最初から最後までびっしり楽譜で歌と音を指定するオペラの面白くもあり、難儀なところでもあるのだと思う。

しかも、古典の書き換えは許さんと言って、「今のテンポ」に合わせた作り直しを自由にさせてもらえないから演出家は大変だ。

能は、完成されてるイメージが強いかもしらんが、室町の頃から今までの間にテンポや演出など変わっているらしい。

色々舞台の都合がありそうな感じは、音だけ聴いても予想がつくと思うのだが。

(ワーグナーの想定した舞台がどの程度「仰々しかった」か、アンチの人が思うほど簡単には言えないだろうと、私は最近思うようになった。)

http://blogs.yahoo.co.jp/katzeblanca/26212303.html