漢字五文字の分厚い供物

「復興文化論」、「映画音響論」ということで、どちらも漢字五文字で分厚い。(お値段は後者が前者の正確に4倍で大違いだけど……。)

ちょっと前に片山杜秀が、今年はフーコー、ドゥルーズ、バルトの焼き直しみたいな本がたくさん出た、と読売の書評に書いていたことがあったけれど、どうやら本のタイトルは営業主導で出版社が決めることになっているらしいので、狙ってるターゲットが少しずつ変わっているということなのかもしれませんね。

新書とか2,000円以下のペーパーバックに軽めのタイトルを付けて新人を売り出しましょう、みたいのは2011年で打ち止めになった。

そうして3.11以後は「危機の時代」なのだから、ここはクリティカルなノリがいいのだろうということで、新しい人をポモな感じのタイトルで売り出して、今の40代、50代に注目してもらおうということになった。

でも、やっぱりこれじゃあ数が出ないので、60代以上に「久々の本格派・大物新人の誕生」と思ってもらえるように、今は漢字五文字の分厚い本に営業のOKが出る風向きになっている。この路線でサントリー学芸賞が貰えることもわかったので、来年の今頃の書店の新刊書は、こういうのがたくさん並ぶかもしれませんね。

(今、博士論文を用意している人は、論題をその方向で調整しませう。就活最新情報はこれだ(笑)。)

しかしこうやってスタイルがどんどん古いところへ後退して、想定読者が高齢化していくと、そのうち、紙の本というものは、既に死んでしまってこの世にいない80代、90代の読者を対象にして刊行するものだ、ということになって、生者であるところの遺族が、「この本は死んだおじいちゃんが興味を持ちそうだから買って帰って仏壇にお供えしましょう」とか、そういう儀式の道具になっていくのではないか。

ひょっとすると、CDの「大人買い」(握手がお目当て)というのは、そうした、商品の供物化に先鞭をつけているのだったりして(笑)。