戦後関西音楽小史 - 大栗裕を中心に(はびきの市民大学)

[テーマ別に関連記事へのリンクを随時追加しています。]

目の前の仕事に追われてご報告が遅くなりましたが、10月から羽曳野市の「はびきの市民大学」という市民講座で、大栗裕のことをお話させていただいています。(大栗裕だけで12回も話題が続くのか、とご不審の向きは、このエントリーの最後に掲載した内容要旨をご覧くださいませ。結構、話題は広がりそうなのです。大栗裕の活動を起点とする「戦後関西音楽史」の試み、でございます。)

  • 講座名 戦後関西音楽小史 ―作曲家、大栗裕を中心に― (大阪音楽大学提携講座)
  • 開講日 水曜日 3限目 (15:00〜16:30)
  • 内 容 関西文化は民間主導と言われます。音楽はどうだったのか。船場出身の作曲家、大栗裕(1918-1982年)と指揮者の朝比奈隆、ヴァイオリンの辻久子らの交流。彼らを支えた人々の歩みを群像劇風にご紹介します。
http://www.city.habikino.osaka.jp/hp/menu000003600/hpg000003565.htm#wed-6

講座では、大阪音大の先生方にご協力いただきまして、リンク先でご案内のように、これからヴァイオリンの北浦洋子先生(11/25)、テノールの小餅谷哲男先生(12/2)、箏・胡弓の小牧万須美先生(12/9)のレクチャーコンサートもあります。

北浦先生は、貴志康一の作品と、大栗裕「青衣の女人」(←実演は数十年ぶりのはず)と「淀の水車」を弾いて下さいます。

小餅谷先生の回は、松村禎三「沈黙」等の実演とともに、大栗裕の歌劇「赤い陣羽織」と「夫婦善哉」の映像(いずれも市販はされていない)などをご覧いただく予定。

小牧先生の回は、宮城道雄作品の演奏とともに、大栗裕の邦楽器作品の録音(音大「大栗文庫」資料から先頃発掘した須山知行、中島警子先生の演奏)などを聴いていただこうと思っています。

受講者の追加募集(1回800円)もやっていますので、お時間の合いそうな方がいらっしゃいましたら、是非。

http://www.city.habikino.osaka.jp/hp/menu000003800/hpg000003701.htm

(以下、受講生の皆さんに配布した各回の紹介文です。[追記:講義の内容をあとでまとめた記事へのリンクを追加しています。ご参考になれば。])

戦後関西音楽小史 - 大栗裕を中心に(はびきの市民大学)

関西文化は民間主導と言われます。音楽はどうだったのか。船場出身の作曲家、大栗裕(1918-1982年)と指揮者の朝比奈隆、ヴァイオリンの辻久子らの交流。彼らを支えた人々の歩みを群像劇風にご紹介します。

●10/14 講師:白石知雄 第1回 耳で聴く大阪 - 大栗裕の音楽

昭和31(1956)年6月、朝比奈隆がベルリン・フィルを指揮したことは、関西の音楽関係者を勇気づける大事件でした。このとき演奏されたのが、船場生まれで関西交響楽団(現大阪フィル)ホルン奏者だった大栗裕の「大阪俗謡による幻想曲」です。天神祭のだんじり囃子と夏祭りの獅子舞囃子を使い、今も吹奏楽編曲で人気のこの作品を中心に、音楽における「大阪らしさ」とは何なのかを考察します。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20100209/p1
参考:

●10/21 講師:白石知雄 第2回 朝日会館の時代 - 戦前の音楽事情

朝比奈隆が焼け跡にオーケストラを組織したところから、戦後関西のクラシック音楽がはじまったと言われます。しかし当時の関係者の多くは、朝比奈を含めて、戦前・戦中世代でした。戦前のモダニズム文化の殿堂、朝日会館での内外の音楽家の演奏会、関西生まれの作曲家、大澤壽人、服部良一、貴志康一の活躍など、戦前関西の音楽事情を概説します。

阪神間モダニズムなど:

●10/28 講師:白石知雄 第3回 昭和三〇年代のオペラ運動

関西のクラシック音楽が最初に全国区の注目を集めたのは、昭和30年前後に新作オペラを相次いで上演したときでした。関西は、能と狂言、文楽と歌舞伎の発祥地であり、少女歌劇という独特の演劇も生まれました。関西のオペラに、上方の土壌・気風がどう生かされたのか。團伊玖磨「夕鶴」(昭和27年)や、大栗裕「赤い陣羽織」(昭和30年)がなぜ大阪の地で制作・初演されたのか、その背景を探ります。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20100211/p1

大栗裕のオペラ関連:

長木誠司『戦後の音楽』:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20101028/p1
関根礼子・昭和音楽大学オペラ研究所『日本オペラ史1953〜』:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20111209/p1

参考:大阪言葉について http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20120128/p1

参考:当時から人気演目だったプッチーニについて

●11/11 講師:白石知雄 第4回 お寺の洋楽 - 京都の仏教合唱団

仏教は、世界宗教の普遍性と、民間信仰に適応する柔軟性をあわせ持ち、日本文化に大きな影響を与えています。明治以後、西洋風の仏教讃歌や、管弦楽を使った法要も試みられました。作曲家たちは、しばしば教団から作曲依頼を受けています。大寺院の多い関西ではこの傾向が顕著でした。教団の布教活動、東洋思想への共感、民俗芸能への関心など、戦後関西の作曲家と仏教との多面的な関わりを概説します。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20100214/p1

大栗裕と民俗仏教(「雲水讃」について):

●11/18 講師:白石知雄 第5回 阪神間モダニズムとマンドリン

西洋音楽の普及を考える上では、学校教育での「上からの」啓蒙とともに、アマチュア有志の活動を無視できません。まだオーケストラを作れなかった明治期には、マンドリン合奏が、社交を兼ねた趣味の集まりとして流行しました。戦後も大学でのサークル活動などの形で、マンドリン合奏は健在です。「ハイカラ趣味」とは何だったのか、今もその感性は生きているのか、日本のマンドリン史を通じて考察します。

大栗裕のマンドリンと音楽物語関連:

●11/25 講師:北浦洋子 第6回 辻久子と関西の作曲家たち

1960年代は、朝比奈隆と大阪フィルが毎年「大阪の秋」という現代音楽祭を開き、ヴァイオリンのスター、辻久子がソ連の作曲家を紹介し、日本の作曲家に新作を委嘱するなど、第一線の演奏家が同時代の音楽に取り組む時代でした。演奏家の側から、戦後の作曲動向はどのように見えていたのか。辻さんが積極的に取り上げた貴志康一や大栗裕のヴァイオリン曲の実演を交え、演奏家と作曲家の関係を考えます。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20091203/p1
辻久子関係:

●12/2 講師:小餅谷哲男 第7回 オペラと日本語

海外の団体が次々来日して、国内にも複数の劇場が建ち、「本物のオペラ」が日本でも身近になりました。西洋と日本に落差を感じ、日本独自の歌劇を模索した時代は遠い過去のようにも思えます。今改めて、日本語で歌い演じることは、歌手にとってどんな意味を持つのでしょうか? 大栗裕「夫婦善哉」、松村禎三「沈黙」など、舞台映像と実演を交えて、オペラの日本語の諸問題を考えます。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20091203/p1

●12/9 講師:小牧万須美 第8回 宮城道雄と大阪

昭和31(1956)年6月、「春の海」を作曲した宮城道雄の列車転落死は、大阪フィル(当時は関西交響楽団)との初共演のための来版途上の悲劇でした。しかし、須山知行と中島警子の桐絃社は、その遺志を継ぎ、大阪フィルと共演する「グランド箏コンサート」を継続的に開催しました。宮城道雄が得意とした箏や胡弓はどんな楽器なのか、洋楽器との共演には、どんな苦労があったのか。実演を交えて解説します。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20091209/p1

●12/16 講師:白石知雄 第9回 昭和の祝祭 - エキスポ'70

昭和45(1970)年の大阪万国博覧会は、それまで楽団(大阪フィル)やイベント(大阪国際フェスティバル)を自前で立ち上げてきた関西の音楽人が、国家事業に本格参加する最初の機会になりました。大阪万博の意義と功罪はさまざまに語られてきましたが、ここでは「地元から見た万博」の視点でEXPO'70の音楽関連事業を振り返り、この巨大祭典を機に、関西のクラシック音楽が公共事業化する過程を検証します。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20100113/p1
参考:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20101108/p1

参考:「東洋のバルトーク」と「東洋の魔女」、五輪・万博との関係

参考:戦後日本の洋楽(柴田南雄と吉田秀和)

●1/13 講師:白石知雄 第10回 昭和の日常 - 放送音楽

大阪放送局(JOBK)の戦前からの独自編成ラジオ放送や、戦後の相次ぐ民放開局で、大阪の放送界は、かつて電波独立国の様相を呈していました。関西から全国区のタレントが多く巣立ったのも、在阪放送局の下支えのおかげでしょう。クラシック音楽も放送と無縁ではありませんでした。放送楽団・合唱団の活躍、国民歌謡やホームソング、音楽物語など、見落とされがちな戦後音楽への放送局の貢献を整理します。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20100113/p1
参考:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20101103/p1

●1/20 講師:白石知雄 第11回 吹奏楽はなぜ流行る?

吹奏楽は、裾野の広いアマチュア音楽のジャンルとして、中高生のクラブ活動を中心に大人気です。でも、軍楽隊を起源とするその歴史、新聞社のバックアップで高校野球の応援・盛り上げとも連動した学校吹奏楽と全日本コンクールなど、吹奏楽は、適切に理解しようとすると、意外に奥行きのある社会・文化現象です。どうして、特に関西で、吹奏楽がこれほどさかんなのか、分析を試みます。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20100120/p1
参考:

参考:日本のクラブ活動と「武道」のエートス

●1/27 講師:白石知雄 第12回 朝比奈隆と大栗裕

朝比奈隆が、ドイツ音楽をレパートリーの中心に据え、高い理想を掲げる関西楽壇の「表看板」だったとすると、十際下の作曲家、大栗裕は、その傍らに寄り添いつつ、時代の多様な要求に応じる現場主義の職人でした。二人の協力関係はどのようなものだったのか。そして大栗裕が昭和57(1982)年に亡くなり、残された朝比奈隆の最後の二〇年は、どのような時代だったのか。平成の関西楽壇を振り返ります。

結果報告:http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20100127/p1