さきほど関西では、NHK総合で「龍馬伝」再放送に続いて1:50から放映されておりましたが、いかがでしたでしょうか?
今回はダイジェスト版。「金の魚の話」について取材を受けた三善晃さんの現在の肉声は省略されていましたが、トーク・ゲストの西村朗氏の大阪弁はちゃんと放送されましたね。(8月の収録当日まで、西村さんのゲスト出演は知らなかったのですが、大栗裕について西村朗がコメントする!ということ以上に、西村さん自身が途中から猛然と大阪弁になったのが強く印象に残っていたのでした。)
この公開収録は、この先、歌劇「夫婦善哉」抜粋などを含めた完全版を2010年11月3日(水)15:30〜17:40、BS2で全国放送の予定だそうです。
-
-
- -
-
あと、11/8(月)にはこういうのをやります。「公開講座フェスタ」というものです。個々の講座内容が全部PDFなので、わたくしの担当分のみ書き出しますと、
「エキスポ・クラシック」 − 音楽家から見た大阪万博 ー(講師:白石知雄(大阪音楽大学)) 2010年11月8日(月) 18:30-20:00 さいかくホール
イベントに鳴り物・音楽は不可欠。1970年大阪万博にも多くの音楽が響きました。でも、関西クラシック系音楽家の会期中の活躍は意外に知られていません。巨大事業で地元は何を得たか。実演を交えてご紹介します。
大阪府/公開講座フェスタ
放送のなかでも話題になった大栗裕の「EXPO賛歌」のことなどのほか、実演(ヴァイオリン:北浦洋子、ピアノ:藤井快哉)で関西の作曲家の作品をいくつかご紹介する予定です。よろしければ是非。
-
-
- -
-
さて、放送されました大栗裕「待てど暮らせど物語」のワンシーンは、格調高いラジオ歌謡と、三善晃の美しい音楽の間に、おちゃらけたものを本当にスミマセン、という感じでございましたが、ちょっとだけ背景を補足しますと、
同じ中沢昭二の脚本で、この前に歌劇「夫婦善哉」というかなりマジメに大阪言葉のオペラ化に取り組んだ作品がありまして、その副産物。同じ手法で大阪の「今」をスケッチしたらオモロイかもしれない、と、なんと申しましょうか、勢いでやっちゃったのだと思います。
武満徹も三木稔などを批判しながら言っていますが(ちなみに個人的に私は武満らの意見に全面賛成ではなく三木稔そんなに悪くないと思いますが、それはともかく)、洋楽の手法で邦楽器を使ったり、洋楽スタイルのオペラで日本の日常を描いたりすると、どこかヘン。恥ずかしいような、こそばゆいような感じになってしまう。この違和感をどうするか、というので、戦後の日本の作曲家たちは色々工夫したわけで、そのミスマッチをいっそ「お笑い」にしてしまおうというのがこのラジオ・ミュージカルスなのだと思います。
(バルトークの民謡とのつきあいかたはOKで、いわゆる民俗派はいまいちだ、というような、戦後の作曲業界で漠然と共有されていた評価は、実は理論的・美学的なものというより、「イカす/イカしてない」というようなモードの問題だったのではないかと、最近、私は思い始めています。これはダサいけれどもやらざるをえない背景があったらしい、とか、あれはかっちょいいかもしれないけれども理念的な何かを読み取れないとか、戦後日本の民族派・折衷主義については、そういう立体的な再検証をしたほうがよさそうな気がします。そもそも、洋楽で日本をやることへの恥ずかしさの感覚自体が、「イケてる/イケてない」の水準でしかすくい取れないもの、歴史のある時期にのみ表層に浮びあがってあたりを支配していた感覚だったような気がするので。)
いずれにせよ、「待てど暮らせど物語」は、一回限りの放送用の仕事、いわば瞬間芸のようなもので、こうしてコンサートで構えて聴くとややチープな感じがしてしまうのは否めませんが、
それでもこのラジオ・ミュージカルス、1957年に天下のJOBKから放送されておりまして、キャストは、
- かおる:筑紫まり
- 由良:かたおかみちあき(不詳)
- 女社長:汐風享子
- 店員:松田篝(NHK放送合唱団団員)
当時の宝塚月組娘役スター、筑紫まりが主役で、今回の番組にも登場した女声コーラスは宝塚歌劇団だったようです。
ともあれ、その「夫婦善哉」や、宮原禎次「大大阪」全曲を含む完全版放送は11/3。本格的な感想はそのときに、ということで。
(どれくらい画面からお茶の間に伝わったのかなあ、と不安ではあるのですが、大阪音大のカレッジ・オペラハウスの皆さんが存分にやり切ったパフォーマンスで収録の現場は大いに涌いておりましたし、大栗裕の2作品には、西村朗に、ここは大阪弁でカマシたれ、と思わせてしまう何かがあったのだと思っております。全貌は是非、歌劇「夫婦善哉」をあわせた完全版でご覧頂ければ。)