エドワード・グレグソン「剣と王冠」のシェークスピアの出典

エドワード・グレグソンという英国の作曲家がシェークスピア史劇に付けた音楽を吹奏楽に編曲した「剣と王冠」という作品があります(全3楽章)。

解説をたのまれて、スコアに掲げられた台詞の出典を調べたのですが、分量の関係で原稿へ盛り込むことができそうにないので、ここに情報を貼っておきます。(既に何人もの人が調べているかもしれませんが。)

リチャード三世へ至るプランタジネット家のややこしい確執については、小谷野敦を読むと様子がわかるよ。

リチャード三世は悪人か (NTT出版ライブラリーレゾナント)

リチャード三世は悪人か (NTT出版ライブラリーレゾナント)

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「剣と王冠」第1楽章

ヘンリー六世 シェイクスピア全集 19 (ちくま文庫 し 10-19)

ヘンリー六世 シェイクスピア全集 19 (ちくま文庫 し 10-19)

「ヘンリー六世」第1部 第1幕第1場 ロンドン、ウェストミンスター寺院

BEDFORD: Henry the Vth, too famous to live long,
England ne'er lost a king of so much worth.

ベッドフォード:あまりに名高いために短命だったヘンリー五世王、
イングランドがこれほど優れた王を失ったことはない。

同上

BEDFORD: Give me my steeled coat; Regent I am of France,
[...]
An army have I mustered in my thoughts,
Wherewith already France is overrun

ベッドフォード:鋼の鎧を出せ、戦ってフランスを取り返す
[...]
頭の中で俺はすでに大軍を召集している。
敵はもう壊滅したようなものだ。

第1幕第6場 オルレアン

JOAN LA PUCELLE: Advance our waving colours on the walls,
Rescu'd is Orleans from the English

乙女ジャンヌ:城壁の上に軍旗を高々と掲げ、はためかせなさい。
オルレアンはイングランド軍から解放されました。

第3幕第1場 ロンドン、王宮

KING: Rise Richard, like a true Plantagenet,
And rise created princely Duke of York."

王:立ちなさい、リチャード、正統なプランタジネットらしく、
これでお前は王族、ヨーク公爵だ。

第2楽章

ヘンリー四世 第1部

ヘンリー四世 第1部

「ヘンリー四世」第1部 第3幕第1場 ウェールズのバンコー、グレンダワーの邸

GLENDOWER: She bids you on the wanton rushes lay you down,
And rest your gentle head upon her lap,
And she will sing the song that pleaseth you,

グレンダワー:こう言っているのだ、床に敷き詰めた藺草の上に
身を横たえ、私の膝を枕にしてほしい、そうすれば
私は、あなたの好きな歌を歌い、あなたの瞼に
眠りの精が訪れるようにしてあげよう、

第3楽章

第5幕第2場 反乱軍の陣営

HOTSPUR: A sword, whose temper I intend to stain
With the best blood that I can meet withal
In the adventure of this perilous day.
Now Esperance! Percy! And set on.
Sound all the lofty instruments of war,

ホットスパー:おれも抜くぞ、いまにこの剣を真赤に染めてやる、
生死をかけた今日の一戦でおれの前に現われる
最高の敵の血でもってな。さあ、声をそろえて
わが一族の鬨の声を! 希望! パーシー!
出陣だ、高らかに戦闘ラッパを吹き鳴らせ、

第5幕第5場 戦場の他の部分

KING: Rebellion in this land shall lose his sway,
Meeting the check of such another day,
And since this business so fair is done,
Let us not leave till all our own be won.

王:わが国の反乱もその根絶すべきときは目の前だ
それにはもう一度今日の痛撃を加えてやるだけだ。
さいわい今日の戦いは上々の首尾であった、この上は
手をゆるめてはなるまいぞ、完全な勝利を見るまでは。

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芝居の台詞はいいですね。書き写して並べるだけで情景が浮かぶ。それに、シェークスピアをどう訳すか、というのは、英文学・翻訳論の保守本流って感じでワクワクします。

三島由紀夫のコスプレ演劇もいいけれど、やっぱりモノホンなシェークスピアですよ。今はネットで原文を簡単にサーチできるし。