加藤浩子さんがイタリア・オペラについてお書きになることは、いつも判断の根拠がはっきりしているし、信用していいに違いない。ブログを拝見して、勝手にそう思っておりましたが、今度出た新書は情報がびっしり詰まって、なんだかすごい。
- 作者: 加藤浩子
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2013/05/17
- メディア: 新書
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いちいち感心させられることを、こんなに書き込んで、すごい本だなあ、とお腹いっぱいになったところで、まだ全体(295頁ある!)の半分、全作品解説にたどりついておりません。
「アルマヴィーヴァ伯爵の大アリア」(ヴェルディじゃないし、この本の中の言葉ではないですけれど)とか、加藤さんの「大○○」はおそらく口癖で、加藤さんが「大○○」と書くと、ドーンと腰を抜かしてしまうくらいでっかいものが目の前にある感じがして、実に爽快な気分になるわけですが、これは、大新書だと思う。
19世紀のグランド・オペラは、人類の歴史が生んだ奇観というべき「欧州大歌劇」ですし、これを語るのは加藤さんの天職なんだろうなあ、と思う。故郷の大邸宅で大農場を大経営した大人物ヴェルディの人と作品。
(ワーグナーなんて目じゃないぜ、などという心の狭いことを加藤さんは決して言わないわけですが、そのあたりの器が大きい感じを含めての大新書。)
テノールのクンデやイタリアでのチョン・ミョンフンについての寸評を読みながら、先日のフェスのオテロを観た私の感想とそれほど違っていなかったので、ちょっと安心した。
劇場人とは何か、ヴェルディの「全権掌握」とはどういうことなのか、そこだけ取っても、とても大切なことがバシバシ書いてあるオペラ論だと思った。