神戸女学院で二年ぶりに全学部共通の講義「音楽を考える」という授業を受け持つことになりまして(半期)、今回は「音楽と映像」というテーマに挑戦しています。
映画やテレビからどんな音/音楽が聞こえているか、逆に、音楽はどんな映像とともに私たちに届けられてきたか。蓄音機とシネマトグラフの誕生から100年の20世紀の色々な事例を分析して、映像に影響を与え、映像から影響を受けるものとして流通している20世紀の音/音楽を「考えて」みようという趣旨です。
大栗裕と戦後日本の音楽のことを調べるようになって、これはもう、コンサートホールやオペラハウスの中で起きていることだけを見ていれば済む案件ではないという思いがありまして(これは、「ゲンダイオンガク」という実験室内の出来事を往年の雑誌『音楽芸術』に載っていたようなジャーゴンで斬るだけでは無理、という思いでもある)、自分の勉強と整理を兼ねています。
先週の1回目はイントロダクションの意味で、20世紀の3人の指揮者が出てくる映像・番組のご紹介。
ちょうど去年生誕100年ということで手軽に映像が入手できる状態になっている朝比奈隆とカラヤンが同じ曲(「悲愴」)を指揮している映像を比較して、
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そのあと、バーンスタインの「オムニバス」でのベートーヴェン交響曲第5番の解説(巨大な楽譜のセットを使っている有名なやつ)の最初の部分を観てもらいました。
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朝比奈を撮った実相寺昭雄とカラヤンの自己プロデュース映像は、はっきり「見せ方」が違うし、バーンスタインの番組は、日曜夕方の家庭にクラシック音楽をどのように届けるか、彼のやり方はのちの音楽番組に影響を与えたとされていますから、20世紀が音楽をどのように「見て」きたか、丁度いいサンプルだったのではないかと思っています。
2回目の今日は、映像と録音をシンクロさせる技術(トーキー映画)が生まれる以前の蓄音機と無声映画の時代=20世紀の30年の話。
リュミエール兄弟「汽車の到着」やメリエスの「月世界旅行」、ブラームス晩年のロウ管吹き込みやバルトークによる民謡の録音など、本を読めば必ず出てくる素材を、とりあえず実物でどんなものか確かめていただきました。
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こういうものを見たい/聴きたいと思えば、すぐに手には入ってしまうのですから、高度情報社会というのはすごい時代です。
学生のみなさんは、実相寺映像で妙に印象的なアップのある新日フィルのヴィオラの「タカラヅカ」風のお姉様を見逃さないし、先入観なくカラヤンの「悲愴」を見て、面白いと思っていただけたようでした。(第1楽章の展開部まで見たのですが、序奏から第1主題までと、推移部、第2主題でカラヤンを撮るアングルが変わるし、第2主題のサビでカメラが涙で曇ったようにカラヤンからピントを外したり、展開部に入って初めてティンパニーを「叩く」絵を挿入して、弦楽器の弓の縦の動き(槍を立てたような)を強調したり、視覚効果の端正なスコアを用意したような映像ですね。)
無声映画は、食わず嫌いで音がないと退屈だろうと考え勝ちですが、見れば引き込まれてしまうもの。平成生まれのみなさんにも、ムルナウの「サンライズ」、水面を滑るボートや、カーヴをくねるように走る登山列車の感じは伝わったようでした。
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