2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

発振する鼓膜と発光する網膜:音響再生産と遠隔視はどのように信頼されているか?

[付記:当初の「発音」を「発振」「振動」に直した。視覚/網膜の「光」に対応させて、聴覚/鼓膜を考えるとしたら「振動」(共鳴)だろうというご指摘を早速取り入れる、ということで。ただし、そういう風にアップデートすると、「発音」という言い方であれ…

ビデオゲームの「否定性」?

私は未だかつて(そしておそらく今後も)アーケードゲームにせよ家庭用にせよ、ビデオゲームを自分でプレイしたことがないし、我が家の歴代テレビ受像器には、放送の受信とVHSやLD、DVDの再生以外の使用実績がない。(他人の家で誰かがビデオゲームをやるの…

「収録」とは

「大フィルはこの曲が得意だと思います。だからやります」という井上道義の決めのコメントに続けてダフニスとクロエの演奏に入って、フルートチームがピッコロからアルトフルートまで、天上から転がり落ちるように音を受け渡すところとか、打楽器の小物の一…

発音と発光

「人間は自ら音を発することができるが、自ら光を発することはできない」というのは、audiovisual litany に追加されるべき決定的な一行になり得るのだろうか?Audible Past を読み終わったら、同じモードでシヴェルブシュの照明の文化史二部作を読み直して…

成功の概念

朝比奈隆、小澤征爾、大野和士、山田和樹、というように、欧米のオーケストラが指揮者として契約した日本人の系譜のようなものを想定してみる。朝比奈隆の場合は毎回単発だったのだから、他の3人と並べていいのかどうか、とか、小澤以後になると、メルボルン…

大学オタク

という言葉を不意に思いついたので、メモしておく。もちろん他意はない。

中世のヴァーチャル・リアリティ

平安時代の半ばに遣唐使を派遣しなくなって、国風文化が栄えた、というのは疑わしい説明で、実際には、朝廷にオーソライズされずに宋へ渡る僧侶がいたらしい。(與那覇潤が一時期よくこのあたりの話をしていましたね。)virtual は、こういう風な「実勢/実…

virtualを虚構と訳した「ふしぎな」時代

今となっては、なんでそんなことになったのか、よくわからなくなりつつあるように思うのだが、人類が使っている各種記号を情報の観点から再編したほうがよろしかろう、とか、通貨は実体と紐付けずに運用しても大丈夫そうだ、とか、たぶん19世紀以来少しずつ…

「理想・「夢」・「虚構」

見田宗介の言う「虚構の時代」の「虚構」を大澤真幸は virtual と言い換えているけれど、fictive ではないのか、気になって確認してみた。増補 虚構の時代の果て (ちくま学芸文庫)作者: 大澤真幸出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2009/01/07メディア: 文庫…

固有名論

現在を「言語論的転回」以後の世界と表象する20世紀の人文は、相対主義と流動化のなかで固有名だけは不動の特異点である、と考えることになっていたようだが、この立場を揚棄することはできないのか?固有名論は、Copyright や Trademark の思想(「みんなの…

4分の3拍子の6つ振り

東京音大が、広上淳一のコーディネートでパーヴォ・ヤルヴィの指揮者講習会をやった、というのをNHKが放送していたが、学生がジュピターの第2楽章を6つに分けて振ろうとするのを、ヤルヴィは即座に3/4の器楽オペラなのだから3つで振れ、と言っていましたね。…

時制と完了

そういえば、会話のドイツ語には現在完了 (habe .... ge---t) が頻出する。書き言葉の記述であれば過去形を使うようなことでも、会話では現在完了で済ませてしまっていた印象がある。ひょっとすると、外国人向けに、敷居を低くするために過去の事柄はとりあ…

下に立つ

ドイツ語だと、Verstanden? と完了形を使うように思うが。わかったかい?と念押しするときと、私の理解では……、Ich verstehe, xxxxx と語りだすのはやはり時制が違っていて、後者は日本語の分かる、より、思う、に近い気がする。いずれにせよ、書き言葉の用…

信念を疑う:無宗教と反宗教

「日本人は無宗教だ」というのは、ちょっと違うのではないか。キリスト教世界の宗教を疑う、いわば、反宗教の思考のようなものが、必要とされなかったのか、輸入に失敗したのかはわからないけれど、曖昧になっているだけなのではないか。……というようなこと…

有限の多数と無限の区別

「○○は数知れない」という演説の紋切り型の言い回しがあるが、有限の多数(「○○は数知れない」と発言している話者にとっては数え上げることができないけれど、無限ではない「たくさん」)と、誰にもいつまでたっても数え上げることのできない無限は、別の概…

よくわからないこと

ネットメディアが吉見先生を人文の代表のように扱うのは「一向に反省の気配がない」の再帰的上塗りだろうし、インタビューを受けてしまう先生が何の運動をしているのか、それこそ知識社会学の格好の観察対象(「最後の20世紀」)という感じだが、自由学芸に…

「短い20世紀」の触り方

NHKが黒柳徹子のドラマをやっているのを視たら、昭和30年代の放送局をスタジオのセットや照明、生ドラマの演出、受像器の映り具合に至るまで再現しようとする情熱がすさまじく、「三丁目の夕日」が一段と精密になったような昭和の東京のなつかし描写と、満島…

ことばと音響

映画音楽からゲームオーディオへ―映像音響研究の地平作者: 尾鼻崇出版社/メーカー: 晃洋書房発売日: 2016/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る必要最小限の簡潔な説明で前提をまとめて、最適な例を選び取って、鮮やかな分析で素人にでも理解できる…

判断力が問われる

もしその団体が新左翼的な手法で民主主義の諸制度に最適化して巧妙なプロパガンダを仕掛けて、それに半ば成功しつつあるのだとしたら(そしてその見立て・告発はおそらく的外れではないのだろうけれど)、しかし、だからこそ、その団体が現政権の中枢に食い…

都市の規模

偶然が重なって、最近ハイドンのことばかり調べているが、ハンガリーのエステルハージ家で20、30人規模のシンフォニーやオペラをやっていたのが、ロンドンへ行ったら常時2管編成のオーケストラを自由に使えるし、桁違いのお金を稼げたので、シンフォニーはも…

第5章

AP

音響再生産の価値形態論Audible Past といえば audiovisual litany と audile techniques を提唱した本だ、という風な紹介がさかんになされているようだし、目次で全体の構成をながめたときにも、忠実性 fidelity の話はあまり興味をそそられなかった。録音…

第4章

AP

男性による出産ジョナサン・スターンの Audible Past (邦訳『聞こえくる過去』)の第4章は、次の章で fidelity という新しいテーマが導入されるのに先だって、ここまでの話を振り返る中継地点になっているようだ。序論で「技術は文化だ」という構築主義を宣…

陣羽織

過去の三谷映画の未公開場面集などから想像するに、台本には、実はどの回も、「あなた……腰つきが違います……ごめん、私の勘違いでした」に類する台詞が色々書き込まれているのではなかろうか。今回は、どれも本筋と絡み合わさっているし、ゴールデンウィーク…

私も動くし相手も動く

商品写真、ブツ撮りは、対象を固定して、カメラも三脚に固定する。(大栗文庫の所蔵品を撮影するのに年末年始はかかりきりだった。すべてがゼロから手探りだったので、細々した機材を揃えるところからはじめて数ヶ月かかった。)風景写真は、静止した対象の…

Stanley Sadie の仕事

ショパン 孤高の創造者 人・作品・イメージ作者: ジムサムスン,大久保賢出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2012/03/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見るジル・サムスンのショパン論(『ショパン 孤高の創造者』の題で邦訳が出ている)を必要があって…

東の山に日が沈む

大植英次と大阪フィルのアルプス交響曲を聴く。最初に熊本の被災者に思いを馳せる「五木の子守歌」の弦楽合奏による演奏があって、公演後のロビーではバンダを含めたホルンチームのステージあり。びわ湖ホールには、開館以来何度も行っているわけですが、京…