2012-01-01から1年間の記事一覧

ヤマカズと「限られたパイ」の幻想

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3年前まで無名だった指揮者の山田和樹(33)が2012年の夏、たて続けに大舞台を成功へ導き、ついに全貌を現した。今年が生誕100年に当たる20世紀の大指揮者、山田一雄(1991年没)は「ヤマカズ」のあだ名で親しまれた。次の世紀に活躍の場を得た山田和樹は、…

朝比奈隆とビルボード・ヒットチャート:「本人は素晴らしいけれど弟子はみんなダメ」は本当か?

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言説A: 「××はひとかどの音楽家だけれど、教師としてはどうなんだろう。弟子と言っている人たちは、形をマネするだけで、中身がない」という語法があります。おそらくこの語法で弟子たちがなで切りにされる典型がレナード・バーンスタインであろうと思われま…

「政治的なもの」の言い換え

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白石知雄氏は下品である、という意見を見かけて、どういう意味なのかなあ、としばらく首を捻っていたのだが、なるほど世の中にはこういう事情があるのかと思い当たった。 ところで日本のアート界においては一般に政治的意識が乏しく、強い政治的主張をもつ作…

洋楽の師範たちのこと、石桁眞禮生、兼田敏、小林研一郎、そして……

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いい歳した困ったちゃんである「山月記の虎の人」は「俺はもっとちやほやされるに値する。ちやほやせえ」とおもてるだけやねんけど、なんかすげー才能とか能力とかあるのに虎になったまま吠えてる人とかと40にもなるとたいそうな数すれ違うわけでして、そう…

未来日記:ユダヤ人問題

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ルビンシュタインといえば、 もちろん、母国ポーランドの大先達ショパンの演奏が有名だが、少年時代にベルリンで学んだこともあって、ドイツ系のもの、とりわけブラームスをも好んで弾いている。 ブラームスのピアノ四重奏曲をルビンシュタインのピアノで ( …

1960年の日本オペラ界は、いったい何があったのか?

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連日同じ話題を引きずってしまいましたが、改めて考えてみると、ああいう文章(→http://blogs.yahoo.co.jp/katzeblanca/23728702.html)を音楽評論家が書くのはどういう時かと考えてみれば、表向きは指揮者の代替わりを論じていますが、同時に、新世代の指揮…

承前(補足):日本の「ドレミ」曼荼羅について

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前の記事に書いた「ドレミ」体質の件です。外国の歌をカタカナに読み下して歌う歌手(「かあああ ろおおお みお べええええん(カロミオ弁?)」という仮名が思い浮かぶような)というのは、プロでも実際には結構いることを私たちは知っているわけですが、歌…

承前:ヤマカズが振ればコバケンが儲かる、でどうか?

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藝術の若き守護神を期待する(http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20120918/p1)、というある種の人々が今も夢見る「運動」にあまり興味がない皆さまにおかれましては、これでいよいよ、小林研一郎の時代が来る、という図式はいかがでしょう?辻井伸行をヴァン…

オーケストラはどっちを向いて演奏するか?

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その「謙譲の美徳」が本心からのものだとすれば、だからこそ大植の演奏は「きちんとしている」ものに留まったのだとも言える。芸術の世界では、「三歩下がって、師の影を踏まず」は無意味だ。 大植英次の大フィル ( イラストレーション ) - Le plaisir de la…

山田和樹ゲーム

大澤壽人がオーケストラ・ニッポニカで「蘇演」されたのが2003年2月で、関西のコンサートへ大澤壽人の本格的な第一派が来襲したのは2006年3月ですから3年の時差があった計算になります(http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20120913/p1)。山田和樹がブザンソ…

大澤壽人の関西における蘇演の軌跡で、クラシック音楽がサブカルチャー化して久しい帝都の時局へ思いを馳せる

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[情報の間違いなどを直して、最後にちょっと付け足しあり。]昨夜、9/2のオーケストラ・ニッポニカ第22回演奏会の当日配布されたパンフレットを拝見する機会を得ました。奥平一さんの作品解説が素晴らしく、熟読せねばと思う中で、2006年のいずみホールでのオ…

近代大阪の青年と音楽

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「大阪クラシック」、連日、大フィルのブログでレポートが出ていますね。10年ほど前に、大フィル・メンバーが年4回大フィル会館で室内楽をやるシリーズがありました。曲目解説を頼まれていた関係で極力毎回通っていたのですが、そのころ若手という感じで出…

不死鳥とちゃんちき

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「市長は府の長と市の長を両方経験されているので、語呂を合わせて不死鳥(ふしちょう)を持ってきました」 橋下市長にブーイングと拍手 大阪クラシック開幕(2/2ページ) - MSN産経west 市長の返しを含めて、なんなんだこの大喜利は、と記事を読んで爆笑し…

洛北社

http://ameblo.jp/tonton1962/entry-11325371367.html

マルタニズム(丸谷明夫指揮・東京佼成ウインドオーケストラ)

DVD

マルタニズム 完全版 [DVD]出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング発売日: 2012/08/29メディア: DVDこの商品を含むブログ (1件) を見る 淀工・丸谷先生の東京佼成のコンサート出演は、当初2011年4月の予定だったのが震災で公演中止になって、今年一…

文楽と歌舞伎に「血縁」はあるか? 能・狂言と文楽・歌舞伎に関するノート

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[論旨がわかりやすいように小見出しを追加。それにあわせて記事のタイトルを変更しました。][↓文楽の「人形」問題の広がりを考えるとしたら、ご紹介すべき本はこちらかなと思ったので差し替え。8/28] 人形記―日本人の遠い夢作者: 佐々木幹郎出版社/メーカー:…

狂言とオペラ、大栗裕「赤い陣羽織」の馬の装束

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故あって、このところ、いま大阪で話題の「文楽」、すなわち近世大坂の義太夫節人形浄瑠璃、を飛び越して、狂言のことを調べています。狂言に通じている方でしたら、この写真をご覧になると、タイトルに掲げたお話のオチはすぐにわかってしまうでしょうか……。

お盆休みの時期に定期演奏会を聴きに京都へ行ったことなど

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京都市交響楽団は関西のオーケストラで唯一8月の定期演奏会をやっています。しかも今年は世間のお盆休みにかかりそうな13日でした。日経大阪版本日夕刊に評が出たはずです。(8月に演奏会の数が少ないのは、自分たちが休みたいというよりお客様のペース…

「赤いウィーン」に労音があった?(岡田暁生『楽都ウィーンの光と陰』では寸断されてよく見えないもの)

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[追記:「赤」がきれいに映えるように(笑)、関連書の紹介を大幅増量しました。] 楽都ウィーンの光と陰作者: 岡田暁生出版社/メーカー: 小学館発売日: 2012/01/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 先に、岡田暁生『楽都ウィーンの光と陰…

NHKラジオ「現代の音楽」1958年7月13日放送分を聴く

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NHKラジオで1957年から放送された「現代の音楽」(長らく柴田南雄が司会をした)の現存する音源の公開というと、昨年のちょうど今頃、ナクソス・ジャパンからNHK「現代の音楽」アーカイブシリーズが出ましたが、今度はナクソスとオンキョーの「N響アーカイヴ…

オルガン演奏会を聴きつつ、直球ど真ん中を待つ

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日経夕刊大阪版に、3日のいずみホールのヴァインベルガーのオルガン演奏会の評が出たようです。誰も気付いていないと思いますが、演奏会の6日後に新聞評が出る、というのは、わたくしとしてはこれまで経験したことのない最速でございまして、しかも、オル…

大阪フィルハーモニー協会『関西交響楽団/日本映画音楽演奏録音全記録』

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ここには書けない問題でかなり精神的にダメージを受けているのですが(←入院していた父親は無事回復・退院しましたので、そういうのではありません念のため)、これはご報告しておかねばならない、と気力を振り絞りまして!一連の朝比奈隆演奏記録のほか、4…

ベルリンのシューベルト、ウィーンのリヒャルト・シュトラウス(岡田暁生『楽都ウィーンの光と陰』)

『美学』最新号に阪大の山口真季子さんがクルシェネクによるシューベルトのピアノソナタの補作を扱った論文が出ています。シューベルトはヨハン・シュトラウスと並ぶ生粋のウィーンの音楽家ですが、クルシェネクやシュナーベル(ピアニストであると同時に作…

門外漢な読書三題、文楽のこと・大正大震災のこと・ジャポニズムのこと

歌舞伎の歴史は、素人が楽しみながら読めるものが色々ありますが、 絵で読む歌舞伎の歴史作者: 服部幸雄出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2008/10メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る こういうものに相当する文楽の本はあるので…

自分で組んだプログラムを解説するのは難しいと思うのですが、それにしても、以下のお話は時節柄アウトかもしれないのでご注意ください

いずみホールの先の演奏会の曲目解説が公開されています。 前世紀のパリと、現在の大阪。そして、いずみホールの空間を巡る様々な音。本日の公演では様々な意味で、時間と空間の、拡がりと繋がりを体感して頂くことになるでしょう。 Facebook コンサートへ行…

抱き合わせ商法と、夏休みに親子で読もう よくわかる日本のオーケストラの歴史

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18世紀末から19世紀初めにピアノという楽器が裕福な市民に普及し始めた頃には、鍵盤の下に裁縫箱のついた小型のピアノが作られたそうです。どれくらい売れたか知りませんが。^^;;Windows95の大々的な宣伝で「パソコン」が市民権を得はじめた頃には、「家庭用…

酒井健治「Danse Macabre〜27人の奏者のための」

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行きがかり上、聴いてみた。http://kenjisakai.net/sound

アーツマネジメントという文明の知恵

「大衆が楽しんでいる芸術には税金を出してはいけない、市場がせっかく成立しているその芸術マーケットが混乱するから」[中略]これは公務員が劇場担当になって、テレビタレントが出るような演劇公演をしたいとか、売れている歌手のコンサートをしたいとか、…

水商売の論理

市音は吹奏楽団ですから団員数も少ないですし若干事情は異なります。シエナやオオサカンなど自立した楽団もあります。 RT @tottokisan: @nekotausagi 市音とセンチュリーは基金の有無で全く違いますね。大体、日本で自立できているプロのオーケストラはない…

市長が交替したことで大阪の文化・藝術が激変したとは思えない

[最後に、街場の画廊とオーケストラの乱立、というアイデアを追記]前のエントリーで、今の市長さんは新種のテレビ番組みたいだ、と書いたら(http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20120729/p1)、生ぬるいというご意見を頂戴したので、なんとなくダラダラ補足し…