2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

カルテットのゲーム・バランス

弦楽四重奏の歴史の見所、ポイントをまとめた文章をあれこれ引っ張り出してにわか勉強中ですが、結局、このジャンルの成り立ちは、ルールというほどには強くはない約束事を絶妙に設定したゲームをハイドンが発見して、これにモーツァルトなんかが乗って、そ…

「弦ベ」とブラス・サウンドの高層化

ジャズのウッドベースは限りなくリズム・セクションだけれど(ビル・エヴァンスはベースを対位声部に昇格させた、というような話が例の岡田暁生のジャズ本に出てくるんじゃなかったっけ?)、吹奏楽の「弦ベ」は、いわゆるシンフォニック・バンドやウインド…

鬼が笑う話

そろそろ、今年はこんな感じだったな、という「まとめ」が見えつつある時期ですが、2014年は、クラシック音楽を無自覚になんとなくやる、というのがどういう立場の人であれ無理な巡り合わせの年だったように思われ、それぞれが切り札に近いカードを出した年…

意識の高いキーワード集

「世界水準」外国から分け隔てなく人材を登用して、自分(たち)が積極的に外国へ出て行くのが「世界水準」なのだとしたら、朝比奈隆と大フィルも「一地方都市に世界水準のオーケストラが誕生した」大事件、ということになるよなあ……。日本は「世界水準」の…

モーラ

音声学基本事典作者: 城生佰太郎・福盛貴弘・斎藤純男編,城生佰太郎,福盛貴弘,斎藤純男出版社/メーカー: 勉誠出版発売日: 2011/07/20メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (3件) を見る

学術を商品化したい人

ドラマと方言の新しい関係: 『カーネーション』から『八重の桜』、そして『あまちゃん』へ作者: 金水敏,岡室美奈子,田中ゆかり出版社/メーカー: 笠間書院発売日: 2014/08/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る

例の馬鹿な甥っ子問題

世間が芸能人の妻問題でにぎやかなときに、大学院時代以来、何十年振りかでベートーヴェンの甥っ子問題を再訪する巡り合わせになっております。セイヤーの伝記から細々と日付を抜き書きしてベートーヴェンの年譜を作っていたときには、あまり何も思わなかっ…

きわどい領域

先端医療で重篤な患者さんばかりが次々登場するのに絶対に人が死なない。だから気楽にみることができる(ドラマとして「遊ぶ」方向で色々試せる)反面、どんどん医療ドラマじゃない感じになっていく、ということかな、ドクターX。退院が決まったところで倒…

派手なパフォーマンスで中身のない関西人って嫌だわ

あ、もちろん、ドクターXの古田新がやった役の話よ、何勘違いしてるのよ(笑)。関西に住んでる人間から見ても、ああいうのって、可哀想になっちゃう。きっと組織のなかで何か大変なものを背負って必死なんでしょうね。でも、百田尚樹は叩かれすぎだと思う…

取材記事の「相場」を探る

新聞記者が研究室を訪ねてくる、どうしよう……。効果的なパブ記事を書いてもらうためには、何に気をつけたらいいのだろう?ジャーナリストの取材にどうつきあえばいいのか、お悩みのあなたにもきっと役立つ取材記事の「読み方」をお教えしよう(笑)。先頃、…

「魔笛」と「パルジファル」

小岩信治『ピアノ協奏曲の誕生』はブラームスに到達。その前のリストのところでは、本のなかで文献を紹介するだけで終わっている協奏曲第1番のすべての主題の間にある関連(いわゆるリスト流の主題のトランスフォーメーション)を具体的に説明したのですが、…

音楽家の科学知識

音楽家の教養のなかでも、文学や隣接諸芸術について音楽家たちがどんな知識・関心をもっていたのか、それから音楽家の宗教観というようなことは調べるのが当たり前になっているように思う。歌や芝居の仕事をしたり、教会で仕事をする人が多かったのだから、…

意志と表象の世界

新聞記者が文化学者の言う通りに書かないのは、学者が思うほどには世間がモノと紐づかない意志と表象、ましてやシミュラークルを信じていないということで、むしろ現場はまだまだ健全ということだと思う。世間に無理に意志を通そうとすると、「役割語」の金…

楽音・雑音・声……どれが「美しい」のかしら

http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20141031/p1↑の続きをつらつら考えています。おそらく倍音仮説が19世紀の段階で有力に思えたのは、「楽音」と「雑音」の区別をうまく説明できそうに見えたからなんじゃないかと思うわけです。で、倍音仮説で機能和声を「自然…

アーツ・マネジメントは人とお金の「使い方」を指南する

でも集客、金策は苦手。人集め金集めは「しない、できない、やりたくない」が本音で、人やお金をキラキラに「使う」が大好きなのだが、雇う側は当然、人集め金集めもやれ、と言う。結果、その方面の業務は「やらされてる」感満点になり、嫌々だから雑なやり…

楽譜の校正

http://blogs.yahoo.co.jp/katzeblanca/26226137.htmlその楽譜は私も知ってますし、どうなっているんだとは思いますが、バルトークの息子が自分で校正した楽譜を出したりしている不思議な動きを見ていると、何かややこしいことがあるんじゃないでしょうか。…

承前:ベルリオーズの不遇な晩年

[追記あり]

もしもショパンが還暦まで生きたら

少し前まで、大澤壽人(ボストン時代の「富士山」と帰国後に恩人ジルマルシェックスの演奏会のために書いた「丁丑春三題」)の前後にラヴェル(「前奏曲」と「シャブリエ風に」、いずれも1913年の曲)とバルトークのソナタを置いて、後半はプロコフィエフの…

漢字五文字の分厚い供物

「復興文化論」、「映画音響論」ということで、どちらも漢字五文字で分厚い。(お値段は後者が前者の正確に4倍で大違いだけど……。)ちょっと前に片山杜秀が、今年はフーコー、ドゥルーズ、バルトの焼き直しみたいな本がたくさん出た、と読売の書評に書いて…

東北の鬼婆

「安達原」(能の黒塚)がそういう話だ、ということは、今まで何回あらすじを読んでもピンとこなかったが、舞台で目つきの鋭い婆さん(遣い手はイケメン桐竹勘十郎様)が神々の黄昏のノルンのように糸車を回しているのを見てしまったので、もう忘れないでし…

アカデミーとID

http://concertdiary.blog118.fc2.com/blog-entry-2047.html http://concertdiary.blog118.fc2.com/blog-entry-2049.html Academy of St. Martin-in-the-Fields をアカデミー室内管弦楽団と呼ぶのをスルーするんだったら(英語名称のどこにも「室内管弦楽団…

「人文」諸派の地盤を引き継ぐ

この人は東浩紀系、あの人は北田暁大系、そんでもってあれは細川周平系。なんか過去20年に一定の仕事をした人たちの「地盤を継ぐ」みたいな人たちが学芸賞に並ぶのは、なんだかなあ、と思う。まあ、初期の学芸賞をもらった渡辺裕からして、明らかに山崎正和…

「味方」はいるのに「敵」がいない日本のサッカー中継

ふと気がついたが、サッカー中継のとき、己のチームを「味方」と言うことはあるけれど、もう一方のチームを「敵」という風には言わないような。ひょっとすると、「味方」という言葉も極力使わないで、プレイヤー目線でゲームに言及するときには「自分と相手…

司令塔のふわりとしたパス

少し前から学生さんと『ブラスバンドの社会史』を読んでいる。(今年は飛び入りで、普段はやらない枠の授業をいただいたので。) ブラスバンドの社会史―軍楽隊から歌伴へ (青弓社ライブラリー)作者: 阿部勘一,塚原康子,高沢智昌,細川周平,東谷護出版社/メー…

サントリー

2014年にもなって渡辺裕と三浦雅士。選ばれたことが学者として「前途有望」の意味になるのであろうか(反語)。 映画音響論―― 溝口健二映画を聴く作者: 長門洋平出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2014/01/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) …

期待される聴衆像(プレイヤーではなくオーディエンスが「汗をかけ」)

思うにメセナ全盛期を象徴するミュージック・トゥデイ(武満徹)みたいのは、それまでの何十年かで「現代音楽」の出し物の在庫がたっぷりあったからできたんじゃないかと思うんだよね。これとこれを組み合わせたらお客さんが喜ぶだろう、と余裕をもってチョ…

ワーグナー

ふと思ったのだが、「反ユダヤ主義」とか「超政治」とか、「最近のバイロイトの演出は」とか、「仰々しい」とか、ワーグナーについて色々言う人たちは、4和音で通作することが、オペラだけじゃなく西洋の作曲の歴史のなかで相当大きな転換点だったかもしれ…

三島由紀夫、高橋和巳、ドストエフスキー、村上春樹

(1960年代後半生まれと思えない読書歴のような気がするけれど、ああ、やっぱり、とも思う。「年の離れた兄」の影響が強すぎて、自我の発達が遅れたのではないだろうか……。)

弱音力

サントリーのエッセンツィアは、結局、今あのホールでマイペースに静かに何かに取り組むのは無理な状態になっていて、3年がかりでお客さんは入らなくてもいいからベートーヴェンをやりたい、とか、結果はどうなるかわからないけれども何かやってくれそうな…

仕切り力

来年の大阪国際フェスティバルで大阪の4つのオーケストラが一晩で演奏するらしい。楽屋、どうするのだろう。2012年の大栗裕没後30年演奏会のときはシンフォニホールの楽屋に出演者すべてを収容できるはずもなく、スタッフさんが大変なご苦労をなさっていた…