2004-01-01から1年間の記事一覧

垣岡敦子ソプラノリサイタル

いずみホール。しっとりと美しい声の持ち主で、アリアも歌曲も、丁寧に勉強しておられることがわかる演奏会でした。ただ、思い詰めたような嘆きの表情というのは、迫真の演技に見えて、案外、すぐにできてしまうもの。それ以外の表現の広がりが欲しい気がし…

伊藤愛未ピアノリサイタル

[一部加筆11/31]イシハラホール。全身全霊で「今この時」の響きの彫琢に賭ける(作品の歴史的文脈や表現様式、作品の美的・形式的統一等を括弧に入れて)、おそらく最先端と言ってよい演奏様式、一種の演奏の現象学を目指しておられるようでした。(彼女の先…

京都市交響楽団第470回定期演奏会

京都コンサートホール。指揮、大友直人。吸い込まれそうに美しい音、水面を滑らかに動くような弓さばきで魅了したデュメイのモーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第5番」と、最後まで何も起こらなかったベートーヴェン「交響曲第3番」。

金剛能楽堂の秋〜第2夜ソプラノの夕べ〜(菅英三子)

能舞台での演奏会。決して歌いやすいとは思われない空間で、余裕のある柔らかい声を保ち、「魔笛」(夜の女王)や「リゴレット」(ジルダ)を楽々と歌うことのできる、本物のコロラトゥーラ・ソプラノ。「星に願いを」、「キャッツ」、「からたちの花」、「…

梶山敦子ピアノリサイタル

ザ・フェニックスホール。ハイドンの変ホ長調ソナタ、ラフマニノフ「楽興の詩」、リスト「バラード第2番」の3曲を淡々と弾いた演奏会。

小笠原順子ピアノリサイタル

イシハラホール。オール・シューマン・プログラム(「アラベスク」、「アベッグ変奏曲」、「幻想小品集」、「謝肉祭」)。乱暴にアクセントを打ちつけたり、内声がボコボコ言うばかりで響かなかったり、聴いていて辛くなる演奏でした。唯一、最後の「謝肉祭…

高木和弘ヴァイオリンリサイタル

午後、いずみホール。ヒナステラ「パンペアーナ第1番」、バルトーク「ヴァイオリンソナタ第1番」、エネスコ「子供の情景」、ブロッホ「バール・シェム」という凝ったプログラム。柔らかく余裕のある音で、技術的には非の打ち所のない演奏でした。ただし、…

関西二期会第61回オペラ公演「椿姫」

尼崎のアルカイックホール。歌とオーケストラのバランス調整。独唱と合唱の交通整理といった舞台上のフォーメーション作りに終始して、声を競ったり、客席の涙を絞るべく畳みかけたりすることのない、不思議なヴェルディ(指揮:大勝秀也、大阪センチュリー…

大阪シンフォニカー交響楽団第96回定期演奏会

指揮:円光寺雅彦、ザ・シンフォニーホール。パンフレットによると、今回演奏されたラフマニノフ「交響曲第3番」を初演したのは、ストコフスキーとフィラデルフィア管だったとか。音のパレットをフル活用したオーケストレーションは、グールドがストコフス…

新・音楽の未来への旅シリーズ2004「室内楽の現在形」

いずみシンフォニエッタ大阪メンバーによる演奏会(いずみホール)。ドビュッシーのチェロソナタではじまるとはいえ、カザルス「鳥の歌」(チェロ、ピアノ)、メシアン「夜の終わりの四重奏曲」のクラリネットソロの楽章「鳥たちの深遠」、シュニトケ「きよ…

大阪フィルのメンバーによる室内楽の愉しみ

遅刻して、2曲目、ウェーバー「クラリネット五重奏曲」のみ聴きました(大阪フィルハーモニー会館)。良くできた曲だと思うのですが、あまり演奏されないですね。アリアの一場面のような第2楽章は完璧(クラリネット:ブルックス・トン)。第3、4楽章の…

シュトゥットガルトのラインの黄金

昨年の日本音楽学会関西支部例会シンポジウムでも、いわゆる「読み替え」の典型として話題になった公演。ASIN:B0002RNBNY面白いか否かといえば、面白いし、よく練り上げられた演出だと思いました。(舞台上は、20世紀初頭のクアハウスの出来事として、シチュ…

ベルク「ヴォツェック」

ザ・カレッジオペラハウスの二〇世紀オペラ・シリーズ。イタリアオペラがスター歌手の檜舞台だとしたら、ドイツオペラは、モーツァルトやウェーバーの時代から、歌(イタリア人ほど洗練されていない)と芝居(演出)と管弦楽のチームプレイ(ワーグナーの「…

菊本恭子ヴァイオリンリサイタル

午後の上記演奏会に続いて、夜の演奏会。ベートーヴェンのロマンス、バッハのニ短調パルティータ、サン=サーンスの第2ソナタ(騒々しくなかったのが好印象)、ショーソン「詩曲」(いずみホール)。数年に一度の発表会という雰囲気でしたが、ご自身で企画…

河江優ピアノリサイタル

没後80年記念のオール・フォーレ・プログラム(イシハラ・ホール)。初期から晩年まで、ジャンルも即興曲、夜想曲、舟歌、変奏曲、バラードと目配りの行き届いた選曲でした。演奏は、硬質で、メロディがなめらかにつながらなかったのが残念。

「憂鬱と官能を教えた学校」(2)

真ん中あたりに、石塚潤一氏のシリンガーに関するレポートが掲載されていました。ポピュラー音楽のコードネームは、対位法を捨てたことで、ヨーロッパの伝統的な調性和声とは似て非なるものになった -- というのは、漠然と感じていたことですが、その起源を…

阿部裕之ピアノリサイタル

「祈り, 祭り, 踊り」というサブタイトルで、モーツァルトのハ短調幻想曲、シューマン「謝肉祭」、グリーグ「ホルベアの時代より」とラヴェル「ラ・ヴァルス」(イシハラホール)。じっくり練り上げられていて、この曲をこんな風に鳴らすことができるのか、…

「憂鬱と官能を教えた学校」

最初の方を少し見ただけですが、とても面白い、というか、とても上手な講義だと思いました。メシアンを聴かせて、「今かっこうが鳴きましたよね」と楽しんでしまう呼吸とかを含めて、今、現場で音楽理論を教えるとしたら、こういうスタンスになるでしょうね…

中田聖子チェンバロ・リサイタル

フレスコバルディからJ. S. バッハまでのトッカータを集めたプログラム(大阪倶楽部4Fホール)。多声が絡み合う時の処理など、ぎこちないところがありつつ、工夫を凝らして、ロッシのトッカータなど、聞き映えのする面白い表現があり、退屈はしませんでした…

ラカトシュ・アンサンブル

ジプシーバイオリン、ロビー・ラカトシュのグループの演奏会(ザ・フェニックスホール)。後半、途中入場ですが、あっという間に、引き込まれてしまいました。伝統的なジプシー音楽は、モンティのチャールダーシュ、ブラームスのハンガリー舞曲(アンコール…

バーンスタイン

同じくバーンスタイン「キャンディード」序曲の解説を準備中。どの旋律が、ミュージカルのどの部分に由来するのか、具体的に指摘した文章が見あたらず、自前でチェック。

ショスタコーヴィチ

ローレル・ファーイ「ショスタコーヴィチ――ある生涯」(アルファベータ)など読み返しながら、「ステージバンドの組曲」(かつて「ジャズ組曲第2番」と誤認されていた全8曲の作品)と交響曲第5番の解説を準備中。

11月分から、日記をこちらへ移動しました。 (10月分は、3webの従来の日記http://www3.osk.3web.ne.jp/~tsiraisi/musicology/index.htmlに、あとで追加します。)

江田縫子門下生による室内楽コンサート

午後、いずみホール。チャイコフスキー「偉大な芸術家の思い出」を弾いた森田絵美さん以外のお二人のピアニストは、パートナーの音を聞く余裕がなく、あまり、室内楽に慣れていないように見えました。なんとなく、ピアノの発表会に、ヴァイオリンとチェロの…

上野真フォルテピアノ・リサイタル

バロックザール。ベートーヴェン「テレーゼ」と「告別」をシュタイン、ショパン「練習曲集」(op.10,25全曲)をプレイエルで弾く試み。特にショパンでは、驚異的にコントロールされた超絶技巧を見せつけられましたが、テンポの感覚や表情のつけ方はモダンピ…

アジアのスーパー・ガラ・コンサート

京都コンサートホール。文化庁舞台芸術国際フェスティバルの一環。金聖響指揮の特別オーケストラの伴奏で、日中韓の歌手によるガラ・コンサート(ジョン・健・ヌッツォは体調不良でキャンセル)。有名オペラの抜粋などもあったのですが、見せ場のアリアを外…

ロマンティック・チャイコフスキーVol.3

いずみホール。5人の指揮者、5つのオーケストラでチャイコフスキーの交響曲全曲を分担する企画の第3回。阪哲朗指揮・京都市交響楽団による、弦楽セレナードと交響曲第6番。比較的大きめの編成で、大上段に構えたセレナードと、明るく軽くサラリとした「…

「三井の晩鐘」

夜、イシハラホールの開館10周年企画。故・三橋節子さんが左手だけで描いた日本画に触発されて、梅原猛が絵本を作成。それを見た当ホールのプロデューサー、戸祭鷹子さんが舞台化を企画。音楽は、浄瑠璃部分を三味線の鶴澤清治が作曲、歌(松岡由佳)と洋楽…

多賀みずほピアノリサイタル

午後、御影の住宅街の中にある世良美術館でのリサイタル。こつこつ、ご自身のペースで活動を続けておられる人のようでした。モーツァルトのソナタ、ベートーヴェン「テンペスト」、ドビュッシー「前奏曲集第1巻」、ショパン「バラード第2番」など。

地主薫バレエ団「白鳥の湖」

大阪厚生年金会館大ホール。地主薫さんの舞踊生活40周年記念公演。オデットは、いくつになってもプリマの夢……。